2017年12月 楽しくシナリオ道場
課題「恋のライバル、強敵あらわる! 絶対に彼女を奪われたくない男が女へ想いを伝え、射とめるセリフ」
7枚シナリオコンクール 光ってる★シナリオ賞 佳作
オンハート 作:藤田寛司(83期生)
新井圭(30)会社員
中島恵(29)OL
青山竜(33)圭の先輩
藤林優奈(29)圭の後輩
○居酒屋・個室(夜)
4人掛けの席に横並びで座る新井圭(30)と
青山竜(33)。圭は髪が薄く太っている。
青山「お前、去年ウチに入社するまで芸人やってたらしいやん。マジなん?」
圭「あ、はい、一応……。落語ですけど」
青山、煙草を1本加えながら、
青山「才能なくて辞めた奴に言うのも酷やけど、今日は死ぬ気で盛り上げろよ。
俺のお持ち帰りの為に」
圭、青山の煙草に火をつけながら、
圭「はい、先輩」
個室の扉が開き、藤林優奈(29)と中島恵(29)が
入って来る。
藤林「先輩方、遅れてすいません! こちら私の大学の友達で、中島恵ちゃんでーす」
会釈し、挨拶をする恵。
青山「恵ちゃんかわいいね~。座って座って」
驚いた様子の圭とそれに気付かず歓談を始める3人。
圭、周囲に聞こえない程の小声で、
圭「恵……」
○(回想)恵のアパート・中(夜)
暗い面持ちで座っている恵と圭。圭はまだ髪があり痩せている。
圭「僕は、売れて恵に良い暮らしをさせてやりたかっただけなんや」
静かに泣き出す恵。
恵「良い暮らしがしたいなんて、私言った事ある?
圭君は私から逃げてるだけやん」
何か言おうとするが言葉が出ない圭。
恵「昔はよく大喜利とか謎かけで楽しませてくれたやん。
私はそれで十分やったのに」
恵、中指の指輪を外し、圭に投げる。
床に転がる赤色の指輪。
○居酒屋・個室(夜)
机の上には複数枚の空いた皿。大きな声で話す
青山と藤林とそれを聞く恵。
恵、暗い表情の圭を心配して、
恵「あの、そう言えばまだお名前聞いてませんでしたよね?」
圭、顔を隠すように俯き、声を変えて、
圭「あ、僕の事はお構いなく……」
恵、首を傾げながら、
恵「あれ、どこかでお会いした事あります?」
青山、2人の様子に気付き、
青山「恵ちゃん、こいつ元落語家やねん。ほれ新井、
とりあえず謎かけいってみよか」
とても驚いた様子の恵。
恵「え、え、新井って……」
恵の声を掻き消すように青山、
青山「ほなお題は……、『青山』で作ろか」
圭、逡巡しているとラインが来る。机の下で確認すると
青山から、『持ち上げろ、ミスったら左遷』の文字。
青山、藤林で新井コールが始まる。
心配そうな顔の恵。
圭、青山をチラと見る。一瞬の逡巡の後、顔を
上げて発表しようとすると、恵の手に赤の指輪を発見する。
圭、心配そうな恵の顔を見る。
机の下の強く握り直された圭の拳。
圭「先輩と掛けまして別れた彼女と解きます」
青山、圭に肩を組みながら、
青山「その心は?」
圭、恵の目を見ながら、
圭「もう話したくないんです」
首を傾げる青山と、静かに涙を流す恵。