2012年大阪校わいわいクリスマスパーティ
課題「いいね!」
大阪校5枚シナリオコンクール 最優秀賞
パートナー・テスト 作:木村 敏男(47期生)
最優秀賞の「パートナー・テスト」は翌月定年を迎える夫が主人公。夫の自分への無関心に淋しさをつのらせている妻は、娘に相談して、テストを試みます。
Facebook等で流行の「いいね!」が課題ですが、親子三人の温かみを伝えつつ、途中で裏をかく展開からは、日ごろの勉強の成果が伺われます。
木村さん、おめでとうございます!
鹿沼 雄一(60)私鉄の助役
鹿沼 澄子(57)雄一の妻・パート勤務
石川 久美(30)雄一の一人娘・主婦
○鹿沼家・ダイニング・キッチン
久美(30)が紅茶を噴き出し澄子(57)に、
久美「母さんが離婚!誰と!」
澄子「バカね。お父さんと決まってるでしょ」
久美「何で?どうしてよ、急に?」
澄子「お父さんは来月で定年よ。私に無関心な人とこれから先、死ぬまで一緒に暮らすなんて
耐えられないからね」
○私鉄駅・構内の喫茶店・中
助役姿の雄一(60)が珈琲を噴き出して、
雄一「そんな…俺が何をした!」
久美「定年離婚って多いんだよ……今度文楽を一緒に見に行った時、父さんが髪型が変わったのに
気づくかどうか。それが母さんからの最後のテストなんだって」
雄一「そんなバカな……」
久美「離婚されたくなかったら、『その髪型いいね』って必ず母さんに言うんだよ」
○国立劇場・小劇場・中
舞台を観る久美を隣の雄一が見つめる。
久美「(囁いて)何よ?」
雄一が慌てて左右に首を振る
○住宅地・道(夜)
澄子が立ち止まって雄一に、
澄子「家に帰る前に私に何か言う事ないの?」
雄一「何かって……いや……」
澄子「そう…何もないならいいけど」
澄子が歩き出す
雄一「(慌てて)ま、待ってくれ」
澄子「何?言いたい事があるなら早く言って」
雄一「言えないんだよ!どうしても!ずっとお前を見てきたはずなのに、今日の髪型がいつもと違うなんて
俺には思えないんだ」
澄子「それが本心?」
雄一「ああ。今、ここで嘘を言ってごまかしても、この先、上手くいくわけないだろ」
澄子「ピンポーン!正解です」
雄一「へっ?」
澄子「私は髪型を変えていませんでした。久美の事だから必ずあなたに話すと思った」
雄一「どういう事だよ?」
澄子「私はほめて欲しかったんじゃない。本当はあなたが私をちゃんと見てくれてるのか、
それを確かめたかったの」
雄一「俺はテストに受かったのか?」
澄子「うん……帰ろう」
澄子が雄一と腕を組んで歩き出す。
●最優秀賞
「パートナー・テスト」作家集団・木村敏男
●佳作
「最後の賄い」作家集団・松下寿美子
「愛、買い取りません」作家集団・野村久美子