2017年12月 楽しくシナリオ道場
課題「恋のライバル、強敵あらわる! 絶対に彼女を奪われたくない男が女へ想いを伝え、射とめるセリフ」
7枚シナリオコンクール 光ってる★シナリオ賞 最優秀賞
折鶴 作:清水幹夫(83期生)
内村直人(16) 高校二年生
沢田亜紀(17) 内村のクラスメイト
木下治(17) 内村のクラスメイト
高田亮平(16) 内村のクラスメイト
○通学路
夏服姿の内村直人(16)、木下治(17)、
高田亮平(16)の三人が歩いている。
木下「直人、お前、最近沢田と仲良くね?」
高田「そう言えば楽しそうに話してるよな」
木下「恋に、落ちた?」
内村「まさか! 全然タイプじゃねえよ」
高田「あれ? 顔が赤いぞ、直人」
内村「バカ言え!」
○二年一組教室・中
昼休みを過ごしている生徒たち。
内村と木下と高田、教室に入ってくる。
教卓の真ん前の席に沢田亜紀(17)が座り、
鶴を折っている。
内村と木下と高田、亜紀を取り囲む。
木下、亜紀に、
木下「どうしたんだい、鶴なんか折って」
亜紀、鶴を折り続けながら、
亜紀「千羽鶴。友達が入院したの」
内村「この学校の子?」
亜紀「ううん。別の学校だけど、幼馴染の子」
高田「何で入院したんだい」
亜紀「自転車で車と衝突しちゃって。足の骨、複雑骨折。
全治九か月だって」
高田「(痛そうに)あちゃあ」
内村「その子、男? 女?」
亜紀「男の子」
内村、下を向く。
木下、内村の顔をチラッと見て、
木下「ま、ある意味、男でよかったかもな。
(高田に)おい、行こうか」
木下と高田、その場を離れる。
高田「(小声で)沢田、その男とできてンな」
木下、首を振って高田を黙らせる。
内村、亜紀の後ろの席に座りながら、
内村「なぁ、鶴折るの、手伝おうか」
亜紀、振り向いて、
亜紀「本当? 千羽まであと三百なんだけど、どうしても
この日曜日には届けたくて」
内村「その子、名前は?」
亜紀「山本義光。かっこいい名前でしょ」
内村、寂しそうに笑う。
○内村家・直人の部屋(夜)
内村、机に向かい、折紙の裏にひと言
メッセージを書いて鶴を折っている。
机の上にはすでに何十羽もの折鶴。
机の棚の時計が午前二時を回っている。
○二年一組教室・中(朝)
内村、鞄から袋を出すと、亜紀に、
内村「ほら、できたよ。百羽ある」
亜紀「もう? すごい! ありがとう!」
亜紀、袋を受け取り、中をのぞく。
○沢田家・亜紀の部屋(夜)
亜紀、机の上に内村の折鶴を広げるが、鶴の
中に何か書いてあることに気づく。
鶴を開くと「義光君が早く治りますように」と
いうメッセージが現れる。
亜紀、ハッとして次々鶴を開いていく。
× × ×
机の上に散らばった百枚の折紙。
一枚だけ「君が好きだ」と書いてある。
○内村家・直人の部屋(夜)
内村、開いた本をお腹に伏せ、ベッドに仰向に
なり一点を見つめている。本の題名は
『好きな彼女を射止める科白』。