2014年大阪校わいわいクリスマスパーティ
課題「クリスマスプレゼント」
大阪校5枚シナリオコンクール 最優秀賞

ルーティンワーク 作:本郷 紀子(61期生)

「ルーティンワーク」はユーモアもあり、哀愁も漂い、なにより擬人化の発想が抜群でした。だれがだれの生き方をみつめているのか、だれにだれが生かされているのか、という視線からは、作者の人生観とやさしさが伝わりました。

電車103系
男性会社員
大阪城

○大阪駅・ホーム(朝)
   乗客が並んでいる。
   大阪環状線のオレンジ色の電車が線路に入って来て停まる。
N「私は大阪環状線を走る電車103系」
   扉が開き、コートを着た中年の会社員やOLが車内から押し出されるようにホームに降りて来る。
N「今日が最後のルーティンワーク」

○走る103系の車内(朝)
   吊り革を持つ若くてイケメンの会社員がスマホで英字新聞を読んでいる。
N「仮に人間の姿で私を表すとしたら、彼が最も近いだろう」
   窓ガラス越しに大阪城が見える。
大阪城のN「あほゆうな!こっちや、こっち」
   口を開けて寝ているOL。
N「私は仕事中に居眠りなど絶対にしない!!」
大阪城のN「はっはっはっ!すまんすまん!今日で最後やろ? 今までご苦労さん」
N「お前はいいよなー。古くなったらリニューアルされて。俺はお払い箱だよ…」

○鶴橋駅・線路(朝)
   側面にローマ字で「OSAKA POWER ROOP」の文字。大阪環状線の沿線風景や、
   名所祭事などが書かれた電車が停まっている。
   反対車線に103系が入って来て停まる。
N「毎日毎日、停まっては走っての繰り返し。私の人生は一体何だったのか…」
   スーツを着た中年の男性会社員が、103系の先頭に向かって深々と頭を下げる。
N「何だ?おっさんどうした?」
   男性会社員、携帯電話で103系の写真を撮る。
N「えー!!あっちじゃなくて私を撮るのか?それとも、あっちはもう撮ったから、ついでに私も撮ろうって魂胆か!」
男性会社員「2014年12月25日、本日をもって私は会社を定年退職します。35年間お世話になりました。有難うございました」
N「…おっさん、あんたは私の誇りだ。役に立てて嬉しいよ。メリークリスマス」
   男性会社員、103系に一礼して改札へ歩いて行く。
   103系、汽笛を鳴らして発進する。

 

●最優秀賞
「ルーティンワーク」 作家集団・本郷紀子
●佳作
「刻み始める針の音」 作家集団・杉本大介