2017年12月 楽しくシナリオ道場
課題「恋のライバル、強敵あらわる! 絶対に彼女を奪われたくない男が女へ想いを伝え、射とめるセリフ」
7枚シナリオコンクール 光ってる★シナリオ賞  佳作

好きだから嘘はつけない 作:和田充裕(82期生)

 茂弘(31)会社員
 太田結(31)会社員
 太田洋子(58)結の母

〇レストラン・中
   落ち着いた雰囲気。客は少ない。
   黒いスーツ姿の茂弘(31)と太田結(31)が
   テーブルを挟んで座っている。
結「もう5周忌になるのね」
茂「早いもんだな」
結「美香は茂さんにずっと思われて幸せだね」
   茂、結の方を見て、
茂「本当に好きだったからね」
   結、視線をそらし、コーヒーをスプーンで
   かき混ぜる。
茂「結ちゃんは結婚しないの」
   結、右手薬指の指輪を見る。
結「実は、会社の後輩からプロポーズされて
 いるの」
茂「いい話じゃないか」
結「……」
   結、指輪を外す。
結「だから、この指輪あなたに返すね」
茂「俺が美香に縛られないように、美香が結ちゃんに
 託した指輪……」
結「茂さんがそんなに思い続けているんだったら、
   やっぱりペアで持っておくべきよ」
   茂、指輪を受け取り、じっと見つめる。

〇結の自宅(朝)
   新興住宅街にあるプレハブ住宅。
   茂が、インターホンを鳴らす。
   太田洋子(58)が戸を開けて顔を出す。
洋子「あら、茂さん、久しぶり」
茂「ご無沙汰です。結さんは?」
洋子「なんかデートがあるとか言って、さっき
 出かけたとこ。駅まで歩きだから走れば
 まだ間に合うんじゃない」
茂「ありがとうございます」

〇駅改札前(朝)
   茂は息を切らしながら改札をくぐる。
   発車する電車の中。結とその隣で楽し
   そう話している若い男が見える。
   電車は茂の前を走り去る。

〇結の自宅前道路(夜)
   結がほろ酔い加減で帰ってくる。
   突然、木陰から茂が顔を出す。
   驚く結。
結「どうしたの?」
   茂、真っ直ぐに結を見て、
茂「2番目だ」
結「えっ」
茂「世界で2番目にお前のことが好きだ」
結「そんなプロポーズきいたことない」
   結、涙ぐむ。
茂「結に嘘はつきたくないんだ。美香のことは
 忘れられない。でも、結のことを愛している」
   結、涙で顔がくしゃくしゃになる。
結「ずっと待ってた」
   結、茂の胸に飛び込む。
茂「待たせてごめん」
結「あの指輪……」
茂「何?」
結「本当は私達を結びつけるようにって、美香が
 私にくれたの」
茂「えっ、そうなのか」
結「うん」
   茂、目に涙をためながら、指輪をポケット
   から取り出し、結衣の左手薬指に
   はめる。
   結、涙顔で満面の笑みを作る。