2015年大阪校わいわいクリスマスパーティ
課題「十三・ラブストーリー」
大阪校5枚シナリオコンクール 最優秀賞

とみ駅 作:安江 萌子(77期生)

高崎冨美(70)
高崎重信(74)

○十三駅東口・前
   人はまばらである。
   高崎冨美(70)が高崎重信(74)と腕を組み、よろよろと歩いている。
   冨美、重信立ち止まり、十三駅を見上げながら
冨美「ここで最後やで」
   重信、いぶかし気に
重信「なんやここは?」
   冨美、微笑み
冨美「十三駅。よぉここでデートの待ち合わせしたんやで。懐かしいわぁ」
   重信、眉間に皺を寄せ辺りを見回す。
   冨美、懐かしそうな表情で
冨美「あんた、十三駅の事をよぉとみ駅ゆうてな。プロポーズも酔った勢いでこんなとこで……ほんまアホやで」
   重信、怒りながら冨美の手を振り払う。
重信「(大声で)お前誰や! なんで俺と腕組んでんねん!」
   周りの人々が重信をいぶかし気に見て通り過ぎる。
   冨美、小さくため息をつき
冨美「重さん……やっぱり思い出されへんか」
   重信、辺りを見回しながら
重信「(大声で)ここはどこや! どこ連れて来てん!」
冨美「ごめんな、重さん。うちに帰ろう」
   冨美、重信の肩を抱こうとする。
   重信、冨美の手を振り払って
重信「やめろ! 俺に触るな!」
   冨美、よろめいて地面に倒れる。
   重信、ふと十三駅を見て動きを止める。
重信「とみ駅……」
   冨美、立ち上がり、心配そうに重信の元へ駆け寄る。
冨美「重さん、大丈夫かいな。そんな動いて」
   重信、茫然と十三駅を見つめて
重信「(小さな声で)とみ……」
   冨美、はっとして重信を見つめる。
   重信、穏やかに十三駅を見つめながら
重信「懐かしいなぁ。よぉここでうちの女房と待ち合わせしたんや」
   重信、悲しそうに冨美に微笑む。
重信「もう、顔も思い出されへん……」
   冨美、目を赤くしながら重信を見つめる。
   重信、冨美を見て微笑む。
重信「あんたによう似たべっぴんさんや」
   冨美、真っ赤な目で微笑む。

 

●最優秀賞
「とみ駅」 研修科・安井萌子
●佳作
「十三の奇跡」 基礎科・杉本永章