ホラー映画大解剖 3
音と音楽が恐怖をつのらせる
突然の大きな音は、人々を飛び上がらせ、驚きを増幅させます。
ホラー映画では、音と音楽が大きな役割を果たします。
逆に、急に静かになりすぎた時には、衝撃的な何かが不意に起こります。
ホラー映画で期待通りの音や音楽が聞こえてくると、観客は調子を合わせることができるのです。
「ハロウィン」(1978年、監督:ジョン・カーペンター)では、当初、社内で効果音や音楽なしで試写した際に、重役たちが怖がらなかったため、シンセサイザーをベースにした音楽と攻撃に合わせて鋭い効果音を割り込ませたところ、即座に恐怖映画としてOKがでたという逸話があります。不協和音も効果的です。黒板を釘でひっかく音などは、ほぼ世界共通の不快とされる音です。
音に続いて、叫びもホラー映画には不可欠です。ホラー映画における叫びは2つに分類されます。1つは、絶妙なタイミングで突然発せられるジャンプスケアとしての叫びで、観客を驚かせるのが狙いです。2つ目は、反応としての叫びで、登場人物の怯える様子を示すことで恐怖心を増幅させるのが目的です。
完璧なホラー映画とは、緊迫感ある映像と観客の注意を方向づけるシーンだけでも成立しますが、音そしてそれが生み出す振動によって特別な要素を加えることで、見る者を骨の髄から揺さぶる真の恐怖を与える作品のことです。(宙)
〈参考文献〉 高橋和久, 永富友海(2025).「英国」小説の手ざわり. Gakken
