1970年にタイムスリップ 2
マンガが社会を動かす1970年
グロテスクなテーマを扱ったジョージ秋山の「アシュラ」や山上たつひこの「光る風」など社会に波紋を投げかける問題作が次々と発表される一方で、谷岡ヤスジの「メッタメタガキ道講座」やみなもと太郎の「ホモホモ7」などのナンセンスマンガが登場し過激なギャグを連発した1970年の『週刊少年マガジン』(講談社)。
極めつけは、ちばてつやの描く「あしたのジョー」だった。新年早々いきなり矢吹丈と力石徹の対戦で始まり、8週間の拳闘の末、リングに沈む矢吹。しかし、勝った力石がそれまでのダメージのため死んでしまう。第1部の幕切れだ。
ファンだった寺山修司が日本読書新聞に「誰が力石を殺したのか」と寄稿し、横尾忠則が弔電を打った。その後、なんと力石徹告別式が講談社講堂で700名の弔問者の中で挙行された。
「あしたのジョー」の読者は、いわゆる団塊の世代の若者たちだった。1947年生まれの彼らは、力石の死を自らの情熱の喪失と感じただろう。そして、矢吹丈が白い灰となって燃え尽きる最期の日を、彼らは企業戦士となって、日本の高度経済成長の中で迎えた。
主題歌の「あしたのジョーの明日はどっちだ!」との叫びを胸に秘めて彼らはバブル期に突き進んで行くのだった。byメイ