手塚治虫漫画選集4

七色いんこ

天才役者にして泥棒、声色と変装の名人である「七色いんこ」。

演劇の名作、名舞台で変幻自在に代役をこなす彼に、手塚の芝居に関する深い造詣と熱い思いが込められた。

各エピソードのタイトルには有名戯曲の題名が用いられ、その作品にちなんだ物語が展開される。

1年2カ月に及ぶ連載で、45本の戯曲が取り上げられた。そのうち2回の幕間には、本作で誕生した犬の玉サブローとお馴染みの不思議キャラ・ママーがホンネ一家として登場し、ドタバタを演じている。

人気を得た玉サブローは、本作完結後「タマサブローの大冒険」で主役デビューを果たすことに。

また1カ月間の掲載となった「終幕」では、七色いんこの過去が語られた。

新しいマンガの表現を常に模索し続ける手塚が、この作品でも過去とは違った作風を披露。

「マンガの本質は風刺」と言い切る彼が、シリアスなストーリーの中にアイロニーや寓意を盛り込む斬新なマンガ表現に挑んだ。

そして、そんな希代のストーリーテラー・手塚治虫の演劇嗜好が結実した人間ドラマでもある。

演技の報酬として目をつけた劇場の観客から、金品を盗み去る七色いんこ。彼の演技は天才的で観客を熱狂させるが、それは卓越した模倣技術によるもので創造性はない。byメイ

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