手塚治虫漫画選集3

どろろ

「どろろ」とは主人公・百鬼丸と旅する、孤児の盗人の名前。

手塚の息子が片言で泥棒のことを「どろろう」と言ったことから生まれたネーミングだ。

学園紛争や安保闘争などで世情が不安定だった時代、漫画界では劇画調の「カムイ伝」(白土三平)が大学生に人気を博し、水木しげるの妖怪ものが注目を集めた。そんなブームの中で手塚が挑んだ戦国妖怪アドベンチャー作品がこの「どろろ」だ。

ただ手塚漫画にはもともと妖怪が登場していたし、描写はいたって劇画風だった。魔物が登場する小説の漫画化「ファウスト」や狼男を扱った「バンパイヤ」などを見ればそのことがよく分かる。

手塚が描いてきたものに、時代がついてきたという側面もあったかもしれない。

本作の見どころはふたつ。ひとつ目は、百鬼丸の自己発見ともいうべき「妖怪退治」。そしてもうひとつは、武士の圧政に抗して立ち上がり、志半ばで亡くなった野党の党首を父に持つどろろによる「階級闘争」だ。

彼らが戦う最大の妖怪は人間が求める「権力」そのものだったため、従来のヒーローものとは一線を画する内容となっている。

また、かつてのヒット作「光」で確立された、主人公と子供との冒険の旅パターンが本作で活かされている。byメイ

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