手塚治虫漫画選集7

ドン・ドラキュラ

トランシルヴァニアから現代の日本にやって来て住みついたドン・ドラキュラ伯爵(ヴォイエヴォーデ・ヴラッド・ファン・ドラキュラ伯爵)と、その娘で松谷中学校夜間部2年生のチョコラ。

そんな吸血鬼父娘のドタバタを描いたコメディタッチの作品。チョコラは制服姿の普通の女子中学生だが、ドン・ドラキュラは黒いマントを身にまとい、全身黒ずくめという不気味な姿。

正統派ドラキュラである彼はニンニクを恐れ、十字架から逃げ回り、日光を浴びると灰になる。その一方で美人に弱く、ゾンビ映画の看板に腰を抜かすという三枚目ぶりも発揮する。

『ブラック・ジャック』(B・J)の連載終了後、手塚はB・Jとは全く正反対の性格を持つ主人公として本作を描いた。

「すさんだ世の中にしらけ、ロマンをもとめる人たちにとって、大きな魅力」となるドン・ドラキュラを描くことで、「アナクロニズム(時代おくれ)のトンチンカンなこっけいさより、むしろ人間本来のよわさ、やさしさを、怪物にみつけだしたかった」という手塚の思いが込められた。ジェネレーションギャップなどを含めた現代文化に対する風刺色の濃いストーリーは読者の関心を呼んだが、突然の中段によって連載が終了。そのためか手塚は新書版の「はじめに」の中で、設定について補足説明をしている。byメイ

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