手塚治虫漫画選集10
ブッダ
仏教の始祖・ブッダ(目覚めた人)を描いた大作。1972年から12年にわたり連載された。
7部69章からなる物語は3000ページにも及び、手塚の宗教観や死生観が強くうかがえる作品となっている。
ブッダの教えよりも、人間としてブッダを掘り下げることで人のいきざまに迫ろうとする手塚の思いが反映された。
ブッダを万能の現人神としてではなく、運命に逆らうことの無意味さを知りながら人間を救う道を探し続けた探究者として描いた。そのため、仏典を踏まえながらもエンターテインメント性の高い作品に仕上げている。
この作品は架空の人物が多く登場する。スードラの少年チャプラ、その育ての親のブダイ将軍、友だちで後にブッタの弟子になるタッタ、コーサラ国の冷酷な勇士バンダカ、シッダルダに恋しながらタッタと結ばれるミゲーラなどは、手塚が物語を面白くするために創造した。
仏典に登場する人物にも、手塚は改変を加えている。その筆頭が、上流階級出身でブッタの従弟であるダイバダッタとアナンダだ。手塚はダイバダッタを人を陥れる現代風青年にし、アナンダを人殺しの小悪党に仕立てている。
さらに仏典では竹林精舎に居を構えた後のブッダの行動はあまり語られていないため、彼の弟子たちのエピソードを手塚はかなり省略している。byメイ