見当違いの芭蕉俳句への旅 3

古池や 蛙飛び込む 水の音

誰でも知っている芭蕉の一句だ。テレビ番組「笑点」の大喜利では、しょっちゅうパロディの俳句作りが問題として出題されている。

何の変哲もない句のようで、斬新なのは、詠い出しが「古池」という風流とは程遠い言葉で始まることだ。江戸時代、蛙といえば、山吹の花がセットになっていたようで、並みの俳人なら「山吹や」と詠い出すところだ。

では、この句に詠まれたカエルは何カエルだったのだろうか。俳句の世界で、カエルといえば、カジカガエルのことだが、このカエルは清流に棲んでいて、古池なんぞには飛び込まない。ならば……となるが、ズバリ、このカエルはツチガエル、別名イボガエルだ。ツチガエルは危険を察知すると、水に飛び込み、水底の泥の中に隠れてしまう。ボチャンという音に気づいて水面を見た時には、ツチガエルの姿はどこにもないというわけだ。

無粋な「古池」+常識破れの「ツチガエル」=画期的な俳句、となっているこの作品には、もうひとつ深い味わいがある。

通常はツチガエルが飛び込む音を聞くなんてことは、まずない。音が小さすぎて聞こえないのだ。それが、芭蕉の耳には聞こえたという。それぐらい周囲が静かだったということだ。

芭蕉はこの静寂の中に、自然の有り様を垣間見たのかもしれない。大喜利のネタにするには、もったいない一句なのだ。byメイ

Follow me!