ホラー映画大解剖 その1
ホラー映画の歴史
「ホラー映画は恐怖を生み出すのではない。恐怖を解き放つのだ」
ドキュメンタリー映画「暗闇の恐怖」(1991年、監督:ドミニク・マーフィー)でウェス・クレイヴンが語った有名な言葉です。
監督が気づくか気づかないかに関わらず、映画はその時代を支配する不安を映し出す鏡となっています。
時代と人々が恐れていたものは、ざっと、以下の通りです。代表的映画もその雰囲気を漂わせています。
1890年代頃~1920年代頃:戦争・変化・共産主義、「フランケンシュタイン」
1920年代~30年代:経済危機・政変、「オペラの怪人」
1940年代~50年代:熱核兵器、「放射能X」
1960年代:社会的混乱・価値の変化、「サイコ」
1960年代後半~70年代:ベトナム戦争・カルト・シリアルキラー、「オーメン」
1980年代:ティーンエイジャー・家族の価値観を脅かすもの、「エクソシスト」
1990年代:世界の終末、「ゆりかごを揺らす手」
2000年代:テロリズム・移動・テクノロジー・拷問、「ファイナル・デスティネーション」
などなど。
そして、2010年代以降は、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(2019年、監督:ポン・ジュノ)のように、身分格差や貧困を前面に押し出したホラーが現れ、ホラー映画は多彩な面を見せています。
一方、2020年には、新型コロナウイルスが世界規模で蔓延し、人類は予期せぬ現実の恐怖に震撼しました。(宙)
〈参考文献〉
高橋和久, 永富友海(2025).「英国」小説の手ざわり. Gakken
