俳句の季語は奇語ばかり? 4
「青挿」「掛香」「蚊いぶし」 夏の季語
今ではあまり使われなくなった季語ではあるが、江戸時代の名だたる俳人が詠った俳句にその季語を見出した時には、洞窟で財宝を発見した時(そんな経験はないが)のようなドキドキ感が生まれて来る。
「青ざしや草餅の穂に出つらん」(松尾芭蕉:1644~1694年)、「掛香をきのふわすれぬ妹がもと」(与謝蕪村:1716~1784年)、「蚊いぶしもなぐさみになるひとり哉」(小林一茶:1763~1828年)の三句が、それだ。
「青挿(あおざし)」とは青麦の穂を炒めて、臼でひいて糸のようによった食べ物のこと。『枕草子』にも出てくると大歳時記には書かれていて、神事の後に食べたお菓子のようだ。
「掛香(かけこう)」とは、匂袋(においぶくろ)のこと。ジャコウなどの香料を絹の袋に入れて、その香りを楽しんだ。
「蚊いぶし」とは、火を焚いて煙でカを追い払うものだ。今なら蚊取り線香、いやアースマットの時代かな?
蕪村の句の「妹」は、文字通り姉妹の「妹」の意味の他に、妻や恋人を指す場合や親しい女性同士の呼び名のこともあり、素直に「匂袋を昨夜の逢瀬の時に、あなたの元に忘れてきたことを思い出しました」と解する他にも解釈ができそうだ。
「青挿」は、清少納言が中宮定子(ちゅうぐうていし)に献上したとのことだが、名高い才女の彼女には、何か思惑があったのかも知れない。byメイ