「 預時通帳 」 J・Tさん 公募小説専科

 公募小説専科に所属。

 2024年 コンクール名「 坊ちゃん文学賞 」に応募

 作品タイトル「預時通帳」

Bangkok city at twilight

「預時通帳」ってどんな作品でしょうか?

作:最近提出したコンクールは『坊ちゃん文学賞』です。『預時通帳』という作品を書きました。結果は来年なのでまだわからないのですが。内容は、お金ではなく時間を預けた通帳『預時通帳』を拾った芸人の卵が、不思議なおじいさんと出会う話です。小説科で皆さんに読んでもらって、それで手直しして提出しました。

芽の出ない芸人の卵である『僕』は、『預時通帳』を拾います。落とし主らしいおじいさんに声をかけられ、おじいさんは、『時間を預ける銀行はどこにでもある。通帳を持っていればそこに行ける』と言うのですが、『僕』は持っていません。そんな『僕』におじいさんは、元気づける言葉を残して、銀行があるという壁の向こうへ消えていきます。

イ:現在はまだ審査中とのことで、良い結果を期待しています。すごくアイデアがあるというか、時間の貯金通帳って小道具にもなっていて観客もなんだろうって思いますよね。普段、アイデアってどういう感じで考えてるんですか? 何かを見てひらめくとか? コツとかあれば教えてください。

作:私は経験したことや頭に浮かんだことを書いていることが多いです。日常の出会いや会話の中での一言が気になって背景を考えてみたりと、自分が感じたことを引き出ししているというか。多くの作品はそこから脚色していく形で作っています。

今回の作品は、一部は子供の頃に思ったことだったり、自分が両親と接していて感じたことや、資料などいろんなものを見る中で思ったことからイメージを膨らませていきました。

イ:なるほど、普段の何気ないことも自分自身のフィルターを通すことで、アイデアに変わっていってるんですね。ところで、ショートショートの作品は難しくないですか? 短い中に観客を引き込むコツとかあるんでしょうか。

作:シナリオだとクライマックスに向けて書く形ですが、小説はそのキャラクターの心情を描きたいとは考えていますね。

イ:つまり、キャラクターが見えることで観客も入っていけると。

作品を書こうと思ったきっかけは?

作:時間について考えることは以前からよくあったのですが、日常の生活の中でのいろいろな人とのやりとりなどもあり、あとは、両親が高齢になって、ふと昔の姿を思い出すことも多くあり、いろいろなことを受け入れていってる姿を見て自然に書き始めていました。

イ:もしかして、作中に出るおじいさんはご両親がモデルなんでしょうか? (もちろんそのまま書くというわけではなく)キャラクターって普段はどういう感じで作られていますか?

作:両親だけというよりも、老いても急ぐ人もいれば、のんびりしている人もいて。いろんな人がいるなと。一歩引いたところから、客観的に見ている自分がいるという感じでしょうか。両親も年を重ねていますので、できないことが増えたりと変化も出てきています。自分も年を取った時にできなくてもそれでいいと思えたらいいのかな。そこまでいったおじいさんて逆に魅力的なんじゃないかと思ったり。

作品を書く時のこだわりってありますか?

作:たくさんの人に読んでもらえたときに、作品に書いたのと同じような境遇の人が読んだときに、その気持ちとできるだけかけ離れないように、心情というか気持ちを考えるようにはしようとは思いますが、難しいです。

イ:ご自身の書かれる作品のカラーみたいなものってありますか? 例えば、コメディ作品が多いなど。

作:AIとか宇宙とかは私はうまく書けなくて、身近な日常を描くことが多いですね。自分が経験した中で触れ合ったものに触発されてイメージすることが多いかもしれませんね。

作:日常生活の中に宝物があるんですね。すごいですね。

イ:前回のインタビューで普段読んでるものと書くものは違うというケースもあったんですが。好きな作家さんとか、作品あれば教えてください。

作:重松清さんと角田光代さん。お二人の作品が好きでよく読んでいます。

イ:お二人のどこが好きなんですか?

作:角田さんは観客に作品を任せるようなところがあるんです。重松さんは作品から優しさを感じますね。

イ:そう聞くと、違うタイプの二人に見えてましたが、Tさんと重な部部分がありますね。すごい発見です。

どんな作家になりたいですか?

作:ほとんど考えたことはないのですが、いろいろなジャンルのものが書けた方がいいかなと以前は思ったこともありました。それで、いろいろ挑戦しようと思いましたが、やはりうまくいかないようです。なので、一番自分らしく書けるものを大切にして書いていければいいかなと思います。

イ:具体的にいうと、その自分らしさってなんでしょうか? 書かれているテーマ? それとも世界観とかですか?

作:自分らしさですか・・・・・・キャラクターの心情をできる限り掘り下げて書きたい。そこまで書いたみたいとは思います。心情にたどり着きたいとは思うけど、うまく書こうとすると違ってしまうのかなって。難しいですね。

イ:書くって奥が深いですよね。では、最後にこれからの抱負を決めセリフでお願いします。

作:書くことをずっと好きでいられるように自分らしく書いていきたいなと思います。

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