文楽を見よう4
三味線弾き
三本の弦を弾く音色で、情景や人物の描写から効果音まで演出する三味線弾きは、太夫との緊張感あるやり取りとともに、文楽の魅力だ。
舞台では、太夫と同じ裃を着用して、向かって太夫の右で演奏する。常に前方を見つめていて、三味線に目を落とすことはなく、暗譜だというから驚きだ。
「朱」という楽譜の付いた本と、「白文」という文章だけでかかれた本を始終持ち歩き、浄瑠璃を全部覚えてしまうというから、大変だ。
その上、「シャラン♪」という音色ひとつで、それが風の吹く音なのか、波の音なのか、心に浮かぶイメージなのかを観客に伝えなければならないから、厳しさも一入(ひとしお)だ。
つま先を立てて座る太夫とは対照的に、両足を「逆ハの字」に広げて尻を落として正座する。
それで、舞台からは小さく見える。様々な種類のある三味線だが、文楽ではもっとも大きい「太棹三味線」を使う。
撥(バチ)は20センチ以上で厚みもあって、三味線弾きには大きな「撥だこ」ができている。
三味線は、決して太夫に語らせるだけの伴奏楽器ではない。
演奏の多くの時間は、太夫の語りに隠れた感じで目立たないが、ちゃんと三味線弾きは技術を磨き、自らが弾きたい世界を突き詰めているのだ。byメイ