手塚治虫漫画選集12

陽だまりの樹

外見は大木でも内部は虫が喰い洞となっている「陽だまりの桜の樹」。

その樹が象徴する動乱の幕末期を舞台に、蘭学医・手塚良庵と下級武士・伊武谷万二郎が繰り広げる人間模様が描かれた大河ロマン。

安政の大地震での活躍が評価された一本気な侍・万二郎は、下田のアメリカ人警護役に抜擢されるが、幕府の崩壊と運命を共にする。

もう一人の主人公・良庵は、実在の人物で手塚の曽祖父にあたる。

「私の祖先も医者なのですが、どんな人であったかさっぱりわかっていません」と語っていた手塚の元に、ある日、日本医史学会の深瀬泰旦から「貴男のご先祖のことを書いた」と論文が届いた。

『歩兵屯所医師取締、手塚良斎と手塚良仙』という小冊子にまとめられたその論文には、高名な蘭方医で幕府奥医師もつとめた緒方洪庵が大坂で開いた私塾の359番目の門人として良仙が学んだ、とあった(ちなみに、福沢諭吉は328番目の門人として入門している)。

そのような事実を知った手塚は、幕末維新史と近代医学の黎明期の医学史を織り込みながら、自身の祖先を主人公とした時代劇マンガの創作を始めた。

手塚は史実をもとに、これまでのヒーロー像とは程遠い等身大の人物として良庵を描くことに。byメイ

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