「文楽へ行ってきた」

 ~台本を捨てよ、劇場へ出よう~

 映画・芝居を見ること数十年。名作からZ級まで自称当たり屋の筆者が関西の劇場を訪ねて歩く。

 シナリオを学ぶだけでなく、映画館や劇場へ行って作品を見てみようという第一弾。

国立文楽劇場さんへ行ってきた。

最初に行くならどこかということで、日本が誇る文楽の国立文楽劇場へ行ってきました。

国立文楽劇場

国立文楽劇場があるのは、大阪の日本橋(にっぽんばし)です。近くには黒門市場などもあり、最近のインバウンドで外国人観光客もいっぱいです。文楽劇場では英語で翻訳を聞けるヘッドフォンも借りられます。当日もたくさんの外国人の方がおられました。

展示室には浄瑠璃で使用される人形や太棹の三味線など、普段見ることのできない展示物もいっぱいあり、文楽が初めてでもすぐにその世界観に溶け込めるようになっています。

展示室

4月文楽公演「絵本太閤記」

今回のお話は明智光秀親子の凋落が「二条城配膳の段」「千本通光秀館の段」「夕顔棚の段」「尼ケ崎の段」という構成で描かれます。(公演内では明智ならぬ武智としてありました)文楽自体はテレビで見たことはあるものの、舞台で見るのは初めてでした。

見せ場となるのはやはり別れのシーンです。三味線の調べに乗せて「夕顔棚の段」では十次郎が真柴(羽柴)方との戦へ旅立つ姿が描かれます。明日をも知れぬ身を待たせたくないと、まだ若い嫁の初菊を想っての言葉が太夫の語りによって紡がれていきます。ドラマのセリフとは違い、染み入ってくるような独特の節回しは浄瑠璃ならではの良さでした。また子を見送る母、孫を想う祖母の視点も重なってきて、避けられない別れが迫ってくる内容も時代劇ならではのものでした。

太棹の三味線

太夫さんの演技

 文楽では太夫さんが一人で語りをされることが多いらしいですが、「二条城配膳の段」では五人の太夫さんの語りの掛け合いが見られました。それぞれの役に合わせた語りになっていて、華やかなオーケストラといった印象です。

 「尼ケ崎の段」では太夫さんの声だけでなく、全身を使った演技ともいうべき語りも見られました。一人一人の個性が出るのも、こういった太夫さんの語りだからこそだと思います。以前に無声映画の講談師と知り合いになったこともあり、演者によって同じ作品でも全く変わるというのを経験したことがあります。人が演じる、人が観る。ここにこそ生の舞台の面白さがあるんだと、改めて感じました。

人形の表情と語りが美しい

人形の魅力

 文楽の人形浄瑠璃を見て思うのが、その大きさと精巧な作りです。三人で一つの人形を動かすことで表情などの細かい動作や小道具、立ち回りも可能になっています。個人的に面白いと思ったのは高さです。人形同士の位置や木へ登るなど、人間の動きでは表現しづらい縦の動きが生まれることです。舞台演劇などでは難しいこういった演出も文楽ならではの魅力だと思います。

文楽で使われる人形

ミュージカル好きとしては、いつか文楽の舞台でミュージカルを見てみたいなと思います。和製の三味線の調べを活かした作品を誰か作ってくれないかと期待しております。

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