見当違いの芭蕉俳句への旅 5
山路来て 何やらゆかし すみれ草
USJの年末カウントダウンに参加した。「スリー、ツー、ワン、ゼロ!」で花火が打ち上げられ、紙吹雪が舞う。傍では、日本一高いクリスマスツリーが七色の光を発して輝いている。
「ウン、元旦にクリスマスツリー?!」「だって、アメリカではクリスマス休暇のうちは、ツリーが飾られているよ」と、教えられてなるほどと思った。
何がなるほどかというと、芭蕉のこの句である。
スミレは野に咲く花で、山には咲かないよとは、俳句クラブの友人の弁。なるほどと思ったが、正月に飾られるクリスマスツリーだってあるじゃんと思う。
草花に詳しいおじいちゃんが、「タチツボスミレやアケボノスミレは、山の中に生えているよ」と教えてくれた。
そこで思った。芭蕉は、本当に山でスミレを見たんだと。自然を愛した芭蕉が、ウソをついてまで句を詠むとは思えない。芭蕉自身、この句は「大津に出る道の山路で」と言っている。京都から滋賀に行く途中で作った句だ。
固定観念で観てしまうと、自然の営みの自由さを見誤ってしまう。今年は猛暑だったが、私は夏の夜、庭先でコオロギの鳴き声を聞いた。
この句は、学校の教科書に出て来て、最初に覚えた芭蕉の句だが、スミレは野にも山にも咲くと思う。
USJのクリスマスツリーは、バレンタイン・イベントまでそそり立っているようだ。芭蕉が見たらどんな句を詠むだろう。byメイ