見当違いの芭蕉俳句への旅 2
旅に病んで 夢は枯野を かけめぐる
芭蕉は、忍者で各地を巡りスパイ活動をしていたという荒唐無稽な時代劇がテレビ放映されていた時期がある。
芭蕉は、故郷・伊賀上野に向かう途中で病に倒れる。その病床で詠んだのが、この句だ。この句を詠んで4日後に亡くなるから、遺作でもある。
枯れ野にはススキがつきものだ。かつては日本の国土の10%ほどがこのススキの原だったらしい。茅葺屋根は、ススキを原料にしているし、ススキを刈り取った後は、枯れ野に火を放って野焼きをして、草原の環境を維持していた。枯れ野の景色は、日本人の原風景なのだ。そのススキの枯れ野に芭蕉の夢は駆け巡っているという句だ。
病床で詠んだのだから、自由の利かないわが身を嘆いた悲観の句のようにも思えるが……病魔に侵されながらも夢は消えないと希望を詠んだ句なのだろうか。ヒントはススキにあると思える。
ススキはイネ科の植物だが、草食動物の多くは、イネ科植物は固くて食べられないという。日本人は、その固くて丈夫なイネ科の植物を家屋の材料に使ってきた。ススキは生きることを意味する植物なのだ。
だとすれば、この句は、風前の灯火の芭蕉が、まだまだ夢はバーゲンセールするくらいあるんだと宣誓した句といえるのではないだろうか。
芭蕉の脳裏には旅は続いており、芭蕉は月日の流れと同様に、永遠の旅人なのだ。byメイ