伝統的工芸品あれこれ その4
自然が育んだ近江上布
近江上布(おうみじょうふ)の産地は、湖東地域。琵琶湖がもたらす高湿度と雨による湧き水が、良質の麻織物を育みました。近江独自の染めでできた絣(かすり)と大麻の糸を使った生平(きびら)の2つが今に伝わっています。大麻は、アサのことで大麻取締法に言う、薬物ではないので念のため。
絣は文様入りで、生平は無地の織物です。ちなみに、伝統工芸の織物で、大麻を使うのは生平だけです。絣は、文様に合わせて染めた糸を高機(たかばた=織機)で手織りします。
糸を染める方法は、櫛推捺染(くしおしなつせん=羽定規で、絣模様を附ける場所に印をつけ、櫛形の道具を押し当てて糸を染める)と型紙捺染(かたがみなつせん=羽と呼ぶ枠に、緯糸を巻き付け、その上に色ごとに作った型紙を置き、へらで染料を刷り込む)の2種類があります。「捺染」(なつせん)とは、糊を混ぜた染料を布に擦り付けて染める技法のことです。
絣の主な工程は、①模様を考える②緯糸に絣模様をつける③整えた経糸を織機にかける④絣模様がずれないようにしながら、緯糸を通して織る、という具合です。
できた近江上布からは、「絣がま口」や「絣はんかち」など、日常身近に使えるものも生産されています。
近江の自然が育んだ織物・近江上布は、彦根藩に保護され生産量・品質ともに向上しました。現在は、伝統を継承していくため「織り人プロジェクト」が地元で進められています。(宙)
〈参考文献〉 唐澤昌宏(2025). 未来につなぐ日本の工芸品①.Gakken
