「私は、大丈夫」 A・Nさん 第一長研

第一長篇研究科に所属。

2023年 コンクール名「 のじぎく文芸賞 」 にて最優秀賞を受賞。

作品タイトル「私は、大丈夫」

「私は、大丈夫」ってどんな作品でしょうか?

作:小説で、障害のある弟がいる主人公がいろいろと我慢しつつ弟や両親のことを考えて生きていたが、自分の本音に気づき、生きたい人生を生きようとしはじめる話です。この作品の主人公は心優しく、両親の期待にも応えたいため自分の心にフタをして生きていましたが、だんだんそれが辛くなり本当の自分の気持ちに気づいて変わっていく様子を描きました。

身近にケアを必要とする人がいると、自分よりも相手を優先してしまうことがあります。でも自分の人生の主役は自分で、誰にも遠慮することはないと考えていて、自分のやりたいこと、挑戦したいことに向き合ってほしいと思い書きました。

イ:障害のある弟を持つ姉。長女である責任感と自分の夢の間で苦しむ姿はドラマらしい葛藤があって、リアリティが強かったですね。大人になるにしたがって、迷いが強くなる流れもクライマックスに向けて重なっています。この主人公のキャラクターはモデルなどいるんでしょうか?

作:特定の人はいません。取材を重ねるうちに人物像を作っていきました。主人公の絵の設定も最初はなかったんですが、後から絵を主人公にと練り上げていった感じです。

イ:キャラクターを最初に決めてから書く感じでしょうか?

作:ある程度はイメージしています。今回も姉弟で書きたくて設定はある程度あって、そこからこの作品を書く中でだんだんと積みあがっていくという感じです。

イ:作家さんもシーンの絵が浮かんだり、セリフが浮かんだりする人もいるそうですが。

作:私はシーンの絵が浮かぶ方ですね。

今回の作品を書こうと思ったきっかけは?

作:「のじぎく文芸賞」という人権問題に関する文芸作品の公募を見て、前々から気になっていたきょうだい児についての作品を書こうと思いました。きょうだい児というのは、兄弟姉妹に障害のある子のことで、作品を仕上げるためにいろいろな本や記事を読んだんですが、知らないことも多くかなり勉強になりました。

今回の作品では、きょうだい児だけではなく、自分のやりたいことを我慢して生きている人も多いかなと思い、自分の本当の夢を思い出したり、一歩自分の進みたい道に行くきっかけになればいいなと思います。

イ:すごく共感性がありました。映画「CODAあいのうた」を思い出しましたね。大人でない設定だからこそがすごく伝わってきます。取材の成果が出た感じですね。普段、取材はどんな感じでされていますか。コツみたいなものがあれば教えてください。

作:書籍やWEBを中心にひたすら読むですね。いろんな視点を拾いたいので、当事者だけでなく、親やその周囲なんかも調べます。個人のブログはおススメです。

イ:けっこう時間がかかっている感じですね。

作:一ヶ月くらいは取材してたりするのかな。調べるのが好きなので。昔、スカイダイビングの題材を調べた時なんか、どこで飛べるかなぁとかも。

イ:もしかして、スカイダイビングも飛んだ?

作:いや、それは飛べるところがなくて(笑)

作品を書く時のこだわりってありますか?

作: 主人公だけでなく、脇役のキャラクターともしっかり対話します。父親だから、母親だからこんな感じだろう、となんとなく性格を決めるのではなく、どういったものが好きで、家族や仕事についてどう思っているのかもきちんと確認するようにしています。実際に作品の中には描かなくても、それをしっかり考えることでぶれないですし、作品の個性にもつながるかなと思います。

イ:そうなんですね。読んでいて、お母さんがすごくよかったんです。自分ができないことで娘に対しての想いが見えてくる。お母さんも苦しんでいるって伝わってきました。対話とありましたが、作者として納得できる合格ラインて何かあるんでしょうか。

作:キャラクターの思うことがお腹に落ちたらが合格ラインですね。自分の考えとは違うことを、キャラクターが思っているときがあって。書いていく中でキャラクターを深く知っていくんだと思います。今回のお母さんも当初は専業主婦のイメージがあったんですが、そこからどんどん進化していきました。

どんな作家になりたいですか?

作:見た後もしばらく心に残るような作品を書ける作家になりたいです。「こんな考え方もあるんだな」「こういうことで困っている人がいることを知った」など、知らなかったことを知ったもらうきっかけになる作品も書いてみたいなと思います。

さらにミステリーも好きなので、読者が驚くような作品も書いてみたいです。

イ:あ、ミステリー好きなんですね。影響受けた作家さんとか好きな作品てどんなものがあるんでしょう。

作:米沢穂信さん、乙一さん、綾辻行人さんや貴志祐介さん。ミステリーじゃないですが山本文緒さんも好きです。ミステリーは予想外だからかな、だまされる感じが好きです。

イ:なんか今回の作品のイメージと違って意外性がありますね。

作:読むものと書くもののギャップがありますね。書くのはハートフルなものが多いですね。

イ:なんかミステリー読んでみたいですね、書きましょうよ。

作:えぇ? どうなんでしょう。挑戦してみようかな。

イ:楽しみにしてます。

ところで、55期生なんですよね? 

イ:実は私が45期生なので、すれ違ってますよね?

作:どうなんでしょう? 時期的にはそうですよね。

イ:基礎科はチサンビルでした?

作:いえ、この教室でした。でも、途中休みもあるけど、十年以上書いている感じです。

イ:センターに来る前から書いていた?

作:いえ、「ここに来て書こうと思った」ですね。友達とマンガ一緒に描こうとしたとき、友達が考えたストーリーに納得いかなくて。お話考えたいっていうのがずっとあったみたいです。今ではシナリオも小説も書くって感じです。

イ:最後にこれからの抱負を決めセリフでお願いします。

作:ああいう話が書きたい、こういう話が書きたいと、漠然と思っているアイデアがたくさんあります。

そのため、抱負は「エンドマークまで書きあげた作品を一つでも多くつくる」です。

マイペースにでも作品を書き続けていきたいです。

イ:創作への意気込みが伝わってきますね。かっこいい!

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