フードデリバリーの今昔4
余話、自宅配達は『富山の薬売り』から…名作漫画「九頭竜」の誕生
江戸時代から始まった富山の売薬。薬屋が家まで来て薬を置いて帰る。そして再び訪れた時、使った分だけの薬の代金を徴収して、薬を補充して行く。当時としては信用貸しの新たな商売形態だった。
その富山の薬売りが主人公の石ノ森章太郎(執筆当時は石森)のマンガが『買厄懸場帖・九頭竜』(1974年・ビックコミック)だ。
主人公の名は九頭竜。売薬は売ヤクでも買厄を売っている。九つの頭を持つ竜の彫り物に隠された秘密を追って、九頭竜は旅をする。
行動半径が限られる時代にあって彼は薬売りという職業柄、日本国中を歩き回れるという強みを持っている。
謎を解くことは、母が殺された理由を知ることでもある。彫り物は9枚。そろえると天下を覆そうとする一団の軍資金の隠し場所が分かるという。
黄金の前に綾なされる醜い人間の欲望が描かれる時代劇は、連載当時も高い評価を受け、後に劇画界の巨匠と言われた「さいとうたかを」がリメイクしている。
さて、令和のフードデリバリーからは、どんな作品が生み出されるだろうか?
時間がない時や作れない時でも、食べたいものが食べられる。加盟店にとっては、来店できない客にも評判の料理が提供できる。配達員にとっては、フリーな時間で仕事ができる。そんなシステムがスマホのアプリで簡単に成立する。現代フードデリバリーには、作品を生む要素が満載だ。byメイ