俳句の季語は奇語ばかり? 8
三者三様の「埋火」 冬の季語
お題は「埋火(うずみび)」だよ、分かっているね、埋火と言うのは、火鉢などの灰の中に埋めた炭火のことだよ。
火の扱いは、囲炉裏や暖炉の時代から、石炭、石油、ガスときて、電熱の暖房器具に替わり、今では夏はクーラー、冬はヒーターの御時世だけど、灰の中からかき出した「埋火」が赤く燃え上がる一瞬は、なんとも言えない喜びを感じ取る時だわね。
そこで「埋火」を頭にして俳句を作ってください……なんて言われて、俳人ビッグ3が、TV番組の「笑点」よろしく手をあげて答えた三句のような作品が次の作品だ。
「埋火や壁には客の影ぼうし」 芭蕉
「埋火や我かくれ家も雪の中」 蕪村
「埋火や白湯もちんちん夜の雨」 一茶
三者三様の個性が詠みぶりに現れていて面白い。
壁に映った影ぼうしは、新たな俳諧を樹立しようと研鑽する芭蕉のストイックな姿勢が現れているし、画家としての才能を併せ持った蕪村の描く埋火から飛躍する雪の原野は意表をついている。
一茶の「ちんちん」は、笑わせる。擬音交じりの句が切なさを醸し出している。
三人にそれぞれ座布団をあげたい名句ぞろいだ。byメイ