「八百八橋にはドラマがある!」その12

~商人の町大阪にはこんな素敵な場所がいっぱい~

道頓堀にかかる最初の橋

 下大和橋は道頓堀にかかる一番最初の橋になっています。と言っても、戎橋やら他に有名なところが多すぎてピンときませんよね。ですが、この下大和橋は大和町が名前の由来になりまして、繁華街として栄えた場所になっております。大和町は東西に長い町(現在でいうと道頓堀から島之内付近にまたがって存在)になっています。その証拠としては東横堀川最後の橋が対となる上大和橋になっていて、そこから日本橋筋付近までずっと続いているのがわかるからです。

 浪花の名橋50選にも選ばれており、江戸時代からある長い歴史を持つ橋でもあります。

下大和橋

下大和橋と小説

 実は下大和橋は小説の舞台としても登場しています。しかも2回。一つは井上友一郎の「あかんたれ一代 桂春団治無法録」の中で、親の厄年に生まれた子供を一度捨てて拾う風習が行われる場所として描かれます。初代春団治も父の厄年生まれのため上大和橋に捨てられますが、拾い役が間違って下大和橋にいってしまうというオチはなんとも大阪的ですね。

もうひとつは、池波正太郎の「鬼平犯科帳」です。まさかの江戸が舞台の鬼平が大阪にも出張してくれたお話です。下大和橋のたもとで宿屋をやっている出雲屋の主人は、実は「高津の玄丹」という大泥棒。上方を訪れていた鬼平との対決が描かれます。

道頓堀沿いらしい町並みの中にある下大和橋

生玉心中

 下大和橋は小説だけではありません。さらには人形浄瑠璃の文楽でも上演された近松門左衛門の「生玉心中」の舞台にもなっています。主人公は下大和橋の北詰に店を出している茶碗屋の若旦那嘉平次です。遊女のさがにおぼれてしまって、遊びのために借金を重ねてしまいます。首が回らないだけでなく、信じてくれた父親の気持ちにも報いることができない。嘉平次はさがと、生玉神社の境内で心中をすることになってしまう。

舞台となる下大和橋は、「こころこころの商ひも、みな世渡りの大和橋、下いく水の泡よりも色にぞ銀は消えやすく」で始まる「大和橋出見世」のシーンで登場いたします。

下大和橋から道頓堀を望んで

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