手塚治虫漫画選集1

ネオ・ファウスト

SF色の濃い現代の神話として、手塚が『ファウスト』の3度目の漫画化に挑んだ作品。

ファウストは15世紀末から16世紀半ばまで実在したとされる人物。バイロン、ツルゲーネフ、ハイネなどの数多くの文豪が作品にしたが、手塚はそのうちのゲーテの『ファウスト』を最高の文学作品と評価した。

しかし原作に登場する女性の魅力に不満を感じたため、本作ではメフィストを悪魔の女性として描いた。そのため手塚は単行本化の際には『百物語』と合わせて読んで欲しいと願っていた。

「クローン人間が地球を破壊する」という本作のストーリーの中で、手塚はバイオテクノロジーに対する不安や拒否反応を描いた。人間が生命を創造することの功罪を、この作品を通して問いかけたのだ。

「人間が人間を創造することの功罪」が作品に登場したのは、手塚が16歳でノートに描きつづった習作SF『幽霊男』。そこには「科学の天上に到達した人間が生命を支配創造するに至って、自然の罰を受け、却って自らの生命を絶ってしまった」という序文が記されている。

遺作となった『ネオ・ファウスト』と、初期の習作に共通するテーマが使われているのだ。このことに手塚の長年にわたる問題意識を垣間見ることができる。byメイ

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