小説「『と』はじめました」 T.K さん 日A作家集団 所属

2024年 コンクール名「 ディストピア飯小説大賞  」 

結果:  佳作

マルチなT・Kさん

イ:本日は2025年のわいわいパーティーで司会をしていただいた、役者に作家に大活躍のT・Kさんにお出でいただきました。

作:どうもこんにちは

イ:役者さんと脚本だと、どちらが自分の中でウェイトが高いとかありますか?

作:それはもちろん脚本です。役者としては特になにかを主にやっているわけではないので、しかし機会があればどんどん役者もやっていきたいです。ただ、脚本を描くときでも脳内では自分が演じているつもりで描いています。書く作業やクラスでの発表自体がすでに一種の脳内一人芝居になっています。

イ:これは役者さんならではですよね。役者さんとして見た時に、一番好きな芝居ってなんでしょうか? 理由も教えていただけますか。

作:野木亜希子さん脚本の「MIU404」で悪役をされた菅田将暉さんですね。表情や目の演技がすごかった。インタビューを読んだんですが、彼は左右の目が非対称で右の顔では鋭い役や不気味な役、左で温厚な役などを演じ分けているそうです。カメラの位置も意識して使い分けているそうです。これは脚本家にはできない、役者だからできることだって思いました。

イ:となると、目指すは脚本を書けば野木亜希子さん、演じたら菅田将暉の二刀流ですね(笑)

今回はどんな作品を書かれましたか?

作:ディストピア飯小説大賞で佳作を取った作品です。簡単に言えばSFに出てくるごはんをテーマにした短編小説賞です。『と』はじめましたは、言葉を発さずともデバイスでコミュニケーションが可能な世界で、主人公が小料理屋で「と」を食べて、言葉を発することの大切さを学ぶ話です。昨今のSNS事情などを加味して「声を出してコミュニケーションをとることの大切さ」をテーマにしました。

イ:いいですね、ディスコミュニケーションが題材なのはすごく現代性がありますね。また本来は食べれれない「と」を食べるという発想はすごく面白かったです。このテーマのもとになったモチーフ(書く動機)があると思いますが、教えてもらってもいいですか?

作:SNSは一方的な発信だったり、文字情報ベースになることもあって伝えたいことが歪曲してしまう。そこから感情を読み取ることが難しいのかなと。それに自分は食事が好きなので、美味しいものを食べたら楽しくなる。一緒に誰と食べたとか、人物同士の関係性などつながりも見えてくる。ちゃんと声やトーンが伝わるコミュニケーションとしての重要性を食事の場所として描いてみたかったのがありました。

アイデアっていつもどうやって集めてますか?何している時が多いでしょうか?

作:とりあえず思いついたらメモにためています。例えば映画やドラマを見ていて、この設定から何かを付け加えたり、もっとこうした方が面白いなとか設定を考えたりします。あとは、ニュースとかツイッターでバズってるものとかでシナリオに使えそうな題材を探したりしています。メモには物語の設定の他に、セリフであったり、意味はないけど語感のよい言葉だったりを思いついたらすぐメモするようにしています。今回の作品で言えば「文字を焼き肉にして食べるグルメもの」というメモから発展させました。

イ:実写では難しいですが、文字を食べるというアイデアは超面白いですよ。これだけで賞がとれたんじゃないかと思えます。ただのメモでなく、ネタ帳的なものですね。アイデアを組み合わせって試されてますか? あれば、具体的にどうやってるかも教えてください。

作:組み合わせというか、元のアイデアがあって、そこに次のイメ―ジを足していく感じです。たとえば以前の作品ですが、メチャメチャ料理下手だけど異星人にはなぜか受ける。そこから異星人の大統領の料理番になっていく。その大統領のイメージを考えた時、「大人は汚い事ばかり考えているので、純粋な子供が大統領になる」というアイデアを組み合わせていきました。

今回の作品を書こうと思ったきっかけは?

作:元々、シナリオ・センターの講義内でシナリオとして発表した作品でした。よく深夜ドラマにありそうなグルメものを描きたかったので、普通のグルメものを描いても面白くないと、食べるものを特殊なものにしようとして描きました。それでみんなの感想を聞いて、もっと主人公の変化を描くべきだと言われました。

ただ「と」を食べて終わりだった物語でしたが、今回小説にするにあたってもう少し主人公の変化のドラマを意識して、SF作品にもあまり触れてない人でも読みやすいように文体も読みやすいようにシナリオから小説に書き直しました。

この小説に出てくる「と」という料理は、そのまま日本語のひらがなの「と」なんです。どうして「と」にしたかというと、まずシュールな感じの食べ物を描きたかったからです。僕自身が、基本的に外食するときは定番よりも期間限定のものや珍しいものに惹かれる傾向があるので、そういう意味でも実際に「冷やし中華はじめました」みたいに「『と』はじめました」って看板があったら『と』って何だろうってなると思うんです。

そして、いちばんひらがなの中で食べやすそうだったからかもしれません。ひらがなの五十音表を見たときに、「て」や「つ」だと物足りないけど「と」だとしっくりくる感じがしました。あとは、日本語的に「~と」みたいな接続しで使ったりする場合があって、むしろメインとして添えるなら逆に面白いんじゃないかって思いました。

イ:発表した題材をアレンジするのは、みんなやりますね。五十音表を見て、どれが合うか考えたエピソードは素晴らしいです。アイデアを練ることができている証拠です。

ところで創立五十周年祭の実行委員会に入ったと聞きました。

イ:今年ですよね、何されるんでしょうか? やっぱり役者として出演ですか?

作:やっぱり役者として出たい思いはありますね。でも、なぜか役者さんが7人くらいいて、出番がないかも・・・もちろん脚本も書いてます。

イ:自分で主役になるもの書けばよかったんじゃないですか。

作:そうですよね。やるなら悪役やってみたいです、サイコパスの役(笑)

イ:脚本を書く上で役者をやってるメリットってあると思ってまして。ご本人としては、書く時と演じる時で変わることって何かありますか。

作:そうですね。作者としては、主人公に共通性や感情移入できるかどうかを見てます。演じながら書いてる部分もありますね。ブツブツ言って・・・

イ:すごいですね。

作:役者の時は違いますね。なんか役に入り込んでいるけれど、後ろから客観的に見ている自分がいる。コントローラーを持つ自分がいる。そんなイメージです。

作品を書く時のこだわりってありますか?

作:人と被らないものを描きたいです。構成や展開は王道でも、設定はできるだけ既存のものから少しずらして、どこかにあるものと似たような作品を描いたりしないこと。今回で言えば、『と』を食べるっていうのを思いつく人はあまりいないとは思いました。

イ:オリジナリティですね。そのこだわりは良いと思いますし、アンテナがちゃんと立って自分にしか書けないものがあるってことです。ご自分のアンテナの傾向ってありますか?

作:まずアイデアを思い付いた時点で、似た作品はチェックしてます。似ている作品であっても根本の部分が被らなかったり、アプローチが違う場合は書きます。そのためには小説や映画、アニメなどいろんな情報を集めてます。

イ:なるほど。好きなジャンルってありますか?

作:SFやミステリーが好きですね。どんな設定やトリックがあるかを考えながら見てます。

イ:今回はSFですけど、ミステリーは普段は書かない?

作:書きたいですけど、SFとか人に見せた時にあまり評価されなくて。

イ:気にせず書いてみればいいんじゃないでしょうか。アイデアがあるのできっと面白いものができる予感がします。

どんな作家になりたいですか?

作:何でもできる作家。というと器用貧乏に聞こえてしまうかもしれないですが、器用貧乏ではなく器用裕福みたいな。どんなジャンルであっても、人間ドラマはたいてい付随してくるのでそこを認めてもらえればいろんなジャンルで活躍できるはずだと思っています。例えばどんな役でもこなせる俳優をカメレオン俳優というのと同じように、どんな作品でも描けるカメレオン作家みたいな。

脚本家はいわゆる裏方だと思います。けど表の役者としての経験が物語のキャラクターやセリフに深みを与え、逆に脚本を描く経験が役者をしたときに役の解釈を助ける。そんな相乗効果で、状況に応じてコインの裏表どちらでも出せるような作家を目指します。

イ:いいですね、カメレオン作家。ミステリーでもラブストーリーでも何でも書ける。でも、そこに作者らしさが乗っていると良いですね。一番の自分らしさって、どこだと思います?

作:今回の受賞でもそうですが、ちょっと角度をずらしたアイデアが武器なのかと思います。シナリオではセリフを褒められることも多いので自分らしい部分かなと思います。人間ドラマはそんな見てないんですけど、人間ドラマは書く。矛盾してますね(笑)

イ:今後やってみたいジャンルや題材なんかあるでしょうか?

作:まだ、誰にも見つかっていない職業とか。例えば、退職代行だって今まで退職はあったのに代行サービスになるとは思ってもなかったので、何かまだ現実でも見つかっていない仕事をフィクションで描いてみたいです……むしろそれ思いついたらビジネスにしたほうが儲かったりして(笑)

イ:確かにビジネスのほうが儲かるかも(笑)

イ:最後にこれからの抱負を決めセリフでお願いします。

作:僕は死んでから評価されるゴッホみたいにはなりたくないので、生きている間に評価されて、めちゃうれハピモスコングラッチュレーション(嬉しいの最上級)な瞬間を手に入れたいです。

イ:では、再来年くらいにハピモスコングラッチュレーションが聞けるよう、お待ちしています。

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