44期の中前美智子さんが受賞されました。作品は『仮の宿りに』。一見理想的な家族が、祖母がボケたことで(実はフリ)バラバラになるが、女子中学生である主人公が立て直そうとする話。
中前さんは「かつて18年間教師として生徒をみてきて、家庭tがいかに大切かを痛感。追求していきたいと思っていました」といいます。執筆前、まず浮かんだのがボケたフリをするお婆さん。そこから孫娘を主人公にしたドラマを考えつくまで一苦労したそうです。
心がけていることは綿密なプロットづくり。映像の場合ならシーン割まで。ラジオなら話の流れで枚数割りした上、特にセリフの分かりやすさ・的確さに留意して書くそう。日頃のラジオの勉強には「NHKのFMシアターは毎週聴き、『TVドラマ代表作選集』の中の気に入ったラジオドラマの脚本は何度も読み返して、執筆時もテキストのように机の上においていましたね」と。
教諭時代は演劇部の顧問として座付き作者気分で戯曲執筆の経験もある中前さん。今は「根性で書き続けて長い作品が放送されるよう頑張りたいです」と意欲旺盛。
「大阪校25周年記念賞」結果最優秀賞『ひまわり』石川隆之佳作『こころに吹く風』佐々木英雄『ココロノツバサ』吉村奈央子
石川さん 『大震災を目の当たりにして、これは語り継いでいかなければいけないと思いました。やはり、ものの考え方や見え方を変えた大きな出来事でしたから。で、震災がらみのものを何本か書いて来て、ここでやっと一本ができたという感じです。ライターとしてはいろんな意味で幅広く活躍できるようになればと考えているので、普段はなるぺく沢山映画を見るよう心掛けています」
佐々木さん 「夢破れた人を応援する主人公にしようと最初から考えていて、ある日バイクに乗っているときフッと全体像がひらめいて一気に書きました。今はコンクールに向けて2本執筆中。そのつど考えたテーマを、うまく伝えられたらと思います」
吉村さん 「傘を翼に見立てて飛ぶシーンは『飛べるって信じてる子がいたらおもしろい』と思ったことから。受賞はうれしかったのですが、佳作ということは、やはり何か足りないところがあるのだナと、それもまた今後の執筆の課題にしたいと思っています」
大阪校49期生、ゼミ科在籍の吉村奈央子さんが、第13回フジテレビヤングシナリオ大賞で、佳作を受賞されました。(応募総数1970篇、大賞2作、佳作3作)。
受賞作は『空の蒼さが目にしみる』。中学生の女の子が、野球部の男の子との淡い恋が進行する中で、独身の姉の妊娠事件や、男の子の両親の離婚問題に接し、少しずつ成長していくドラマです。吉村さんは「人が幸せかどうかは、その人自身が決めること≠描きたかった」と言います。
元々は小説家を志望。中学生の頃、クラスで小説を書くのがはやったのがきっかけとか。大学生のとき、偶然図書館で『月刊シナリオ』をみつけて、そのおもしろさに開眼。図書館に入り浸ってバックナンバーを読んでいるうち、「自分は映像の方が表現しやすい」と感じたことから、シナリオを書き始め投稿するようになったそう。最初はほとんど独学。後、センターの夏合宿があることを知り、昨年参加、大阪校にはその秋、入門されたばかりです。
受賞の一報が入ったときは本当に驚いたとか。その後は「こちらからお願いして企画書を出させてもらっているのですが、受賞直後に3本書いただけで今は滞りがち。少しジレンマを感じています。今は、早く自分のペースをつかんで、映像化に値する作品を書いていきたいと思っています」
漁師として地道に暮らして来た父親。アメリカの大リーグを目指して渡米する、冒険心に満ちた息子。それぞれ真剣に生きているのに理解し合えない……対立する親子が和解していく様子を描いた『二人の男』(50分)がこの夏、NHKのFMシアターでオンエアされました。執筆は、大阪校29期出身で一の会♂員の梶田裕子さん。95年第3回橋田賞新人脚本賞で佳作入選されていますが、ラジオの世界では、93年にキッスFM「神戸ドラマエイト」でデビュー、1時間ものを書くのは今回で3回目だそう。昨年末には同じ50分もの『真冬のプレイボール〜管理職の決断』がオンエアされています。
ラジオの魅力について聞くと……「見えないものをどう感じ取ってもらうかが、難しいのですが……。でもその分、想像力を働かせて聞いてもらえるわけだから、そんなセリフってどういうものか? 考えることですね」。50分間リスナーを引き付けておくためには? という質問にも「やはりセリフ。言葉の端々まで気を使う」と。
入門して十数年。シナリオは、いろんな人がかかわることで平面が立体化していくのが魅力的という梶田さんですが、コンスタントに書き続けられたその秘訣は? 「書きたいものがあるからです。書きたくて仕方がないものが」最後に、生徒へ一言お願いすると、「私もまだ皆さんと一緒。とにかく書き続けてください。私も書き続けます」と。
日本テレビのシナリオ登龍門で優秀賞を機に上京されて丸3年の、大阪校出身・田嶋久子さん。今年3本のテレビドラマで活躍されました。
既に放映済みですが、30分1話完結の恋愛マニュアルドラマ『G-taste』(テレビ朝日系)では12話中6本を、コメディドラマの第二弾にあたる『OLヴィジュアル系2』(テレビ朝日系)では4話と6話を執筆。後者は、田嶋さんにとって初めての全国ネットの一時間連続物で、パート1を踏まえた上で、切迫した状況の中での4人による共同執筆など、貴重な経験をされました。
また、7月からの連続ドラマ『ウソコイ』(関西テレビ系)では5話以降のストーリー作りで脚本協力。ドラマの行く末が楽しみですね。「それまでの焦りが、これらの仕事を通じて自分を客観視できるようになったことで少なくなった。今はマイペースで頑張ろうと思っています」
大阪校41期の鈴木達也さんが受賞されました。作品は『純じゅん』。
主人公は、車椅子で生活する男のためにバリアフリーの住宅を買おうとファッションヘルスで働く女性。選評から、愛の切なさが伝わるラブストーリーのようです。タイトルは二人が純粋であることから。「愛があれば障害は乗り越えられる」を描きたかったと言います。
約10年前に東京校に1年半ほど、大阪校には4年ほど前から在籍。10年間、志を持ち続けていられてのは「どこかに書けるという自信があったから」と。目指すのは、テレビドラマとして見て楽しんで元気が出る作品。心掛けていることは「登場人物それぞれに気持ちを入れないといけないので、片寄った考えにならない生活をすること」と。「学生のとき、ニール・サイモンのおかしな二人≠見て、こんなにおもしろいものがあるのか! とすごく感動したんです。笑って、泣けて、怒れて……。僕もそんな感動を人に与えられたらと思って」
大学時代からアマチュア劇団で執筆、約3年前に大阪校に入所された45期・尾崎知紀さんがコンクールで健闘中です。
『第41回シナリオ募ります』では心に傷を持つ女性ライターが幽霊屋敷の謎に挑む壊れた振り子≠ナ奨励賞、『NHK札幌放送局平成12年度オーディオドラマ脚本募集』では幼なじみとの不器用な恋愛を描いた定休日ありません≠ナ佳作を受賞。現在は、『日本テレビシナリオ登龍門2001』で、元アタリ屋がふとしたことで示談屋となり被害者と加害者の心を結ぶ。示談屋 健吾≠ェ最終選考に残り、結果待ちの状況です。
執筆の際、心掛けていることは、丹念な下調べ。新聞のスクラップなどは常日頃からとか。舞台にかかわった経験から「お客さんは常に意識している」と。大阪校では、研修科と長篇研究科に属し、旺盛な執筆欲をみせておられます。
「あるとき、著名なライターにもすごい習作期間があることを知ったんです。才能があっても努力している。僕も人の2倍3倍書いてみようと思いました」
汗がコンクールに輝いた尾崎さん。今後が楽しみですね。大阪校一同、応援しています。
「人生っていいもんだなあ」
祭壇の前のオルゴールに刻まれた言葉。故・倉田順介先生が生前、よく口にされていた言葉です。
3月25日、昨年末に天に召された先生を偲ぶ会が開かれました。当日は、ご遺族、そして、東京校や、先生が長年勤めておられた宝塚映像をはじめとする業界関係の方々のほか、講師の先生方、在校生、OBが出席。思い出話や、「シナリオ・センターは永遠に不滅です」とおっしゃった大阪校20周年記念パーテイの折りのフィルムのほか、年表やアルバム、プロデュース作品などで、先生の在りし日を偲びました。
小島与志絵代表は最後のあいさつで、「いつも姿勢を正しておられた先生により、大阪校はしっかりと重心を据えてきた。今、さみしさは校内に張り詰めている。でも、先生は、多くの遺産を大阪校に残された。その中でも一番は、親心にも似た、生徒さんへの愛情からくるアットホームな空気だと思う。わたしも大切に残していきたいと思う。先生が愛されていたシナリオ・センターを、わたしも愛し続けていく。皆様にもどうぞよろしくお願いしたい」と思い出と感謝、抱負を、先生ご闘病中、代表を励まされた方々への感謝の気持ちとともに述べられました。
『占有家族』で栄えある賞に輝いた杉本さんは、家族を失った3人が擬似家族を作る受賞作で「信頼関係を築きあう姿を描きたかった」と言います。
大阪校30期。入学されてちょうど十年ですが、シナリオを書き始めたのは入学十数年前の大学時代。「我流で、社会人になってからも少しずつ書いていました。センターのことは知っていましたが、仕事が忙しくて。でも、交通事故にあった時『やりたいこともしないで死ぬところだった』と考え、入学しました」
「日々新たな発見があった」という受講期間。宿題の添削では叱咤激励される中、発奮しながら執筆。時代劇が好きで、ゼミに進んだ約1年間はそればかり書いていたそう。
現代ものを書き始め、平成6年に応募した、「第5回TBS新鋭シナリオ大賞」で最終選考に残り、『新・部長刑事アーバンポリス24』ストーリーコンクールでは一位入選してオンエア(後も数本)、その3年後の『第23回城戸賞』では最終選考まで。この間に「プロに!」との思いが強くなっていったとか。
10年間書き続けられたのは「仲間がいたことと、数発の花火で終わりたくない、という意地かな?」。ちなみに執筆時に心掛けていることは「資料集めで知識を蓄えること」
今は「プロ作家として、およびのかかるライターになりたい」と話す杉本さん。大阪校のみんなも応援、楽しみにしています。
大阪校42期生で、現在は東京校在籍の西井史子さんが多彩に活躍中。
日本テレビのアニメ番組『週間ストーリーランド』では、『こわれた土偶』を執筆。小学生たちが土偶を壊してしまった責任を互いに被ろうとするドラマで、一昨年秋にオンエアされています。
その経緯では、プロット採用の連絡の際に「明日までにシナリオを」と。夢中で執筆したものの、まだシナリオ修行は一年ほどということもあり、一稿目はプロデューサーに散々言われる始末だったとか。一週間ほど、キャラクターの立て方など色々と教わりながら、ほぼ毎日直しをするような状況の末、一旦OK。その後、多数が参加する会議の席でプロデューサーが「作家の考えとしては」と口にするのを聞いたときは、すごく感動されたそうです。
また、プロットライターとして、日本テレビや読売テレビの数々の連続ドラマ、火曜サスペンス劇場などで執筆。「現場に入って、テレビの前のお客さんがどう感じるかを考えるようになりました。見た人が元気になるドラマを作りたいですね」。
NHKの第25回創作テレビドラマ脚本懸賞公募≠ナは育成奨励賞も受賞。また一人、期待の星。大阪校一同、応援しています!
昨年12月10日チサンホテルで、約150人が集う中、開催されました。
「コンクールを総なめした画期的な年だった。来年も夢をもって」との後藤千津子所長の挨拶の後、ゲストの方々が登壇。元NHK大阪放送局プロデューサー・土居原作郎先生が「『言葉が目の邪魔をする』という言葉がある。いかにものを素直に見るか?に留意して、いろんなことを作家精神をもって作品に結び付ける逞しさを」と。
元読売テレビ取締役・荻野慶人先生が「コンクールのアドバイスとしては、誰もが書かないことを書く。手段として、仏映画の名作『パリ祭』の中で見られたような共同脚本という手も。審査経験から入選確立は高い」
大阪校のOBで『深層の恐竜』著者・壱岐拓磨氏が「シナリオに小説、いずれも基本はすべてセンターで学んだ。その一部が、伝えたいことは全員に伝える、そのための努力は惜しまない、手を抜いて書く罪深さ」
同OGで昨年デビューされた関えり香氏が「通学時は授業が楽しく、交際範囲になかった仲間との出会いにも刺激を受けた。深夜枠や連続ドラマ『QUIZ』などを書き、初めてホテルでの缶詰やTV局での寝泊まりを経験した」など話して下さいました。
ほか歓談タイム、コンクール上位入選者の話、恒例の、最終審査を出席者全員で行うシナリオ・コンクールもあり、一同、大いに刺激を受けました。