2008年大阪校大阪校わいわいクリスマスパーティ 
課題「笑顔」


チケット  作:西 史夏(62期生)
<人 物>
 宮田結子(36)パート
 宮田舞 (12)結子の娘
          小学6年生
 本村正子(57)結子の母
最優秀賞の「チケット」からはとても素直なやさしさが伝わってきました。よくコンクールの審査評で「ヒネリがない」といった意見がいきかいますが、反対に、素直さはストレートに人の心に届くということを感じさせられた、あたたかい作品でした。西さん、おめでとうございます!
○宮田家・リビング
   
仏壇に手をあわせている喪服姿の宮田結子(36)と本村正子(57)。
   宮田彰(35)の遺影。
正子「彰さんが亡くなって1年経つのね……」
結子「……」
正子「あんた、また痩せたんじゃない? もうそろそろ、ふっ切らないと」
結子「(さえぎり)ほっといてよ」
正子「……あんたの笑った顔、随分見てないわ」
結子「そんな気に、なれる訳ないじゃない……」
 
  目を伏せる結子。

○同・台所(夜)
   洗い物をしている結子。しんどそうに自分の肩を揉む。
   食べ終えた食器を運んで来た宮田舞(12)、それを見て、
舞「ママ! ちゃんと舞のチケット使ってよ」
結子「チケット? ……ああ、母の日にくれた」
舞「そう、肩叩きチケット!」


○同・リビング(夜)
    結子の肩を叩いている舞。
    傍らの菓子箱、手製の肩叩きチケットが山のように入っている。
舞「ママ……今日が何の日か知ってる?」
    結子、カレンダーを見て、
結子「今日? クリスマスはまだだし……あっ」
舞「舞の誕生日」
結子「ゴメン……ママったら。明日、お祝いしよう。プレゼント、何欲しい?」
舞「実は、もう用意してあるの」
結子「え?」
    舞、仏壇の下から菓子箱を出して
舞「ママは、これを舞にプレゼントして」
結子「またチケット? 一体何させられるかしら……」

   結子、箱の蓋を開けてみる。中には、”スマイル”と書かれたチケットの山。
舞「スマイルチケット。それを使ったら、ママは笑顔になるのよ」
結子「舞……」

   舞、チケットを一枚取出すと結子に渡し、
舞「はい、ママ」
   手製チケットのスマイルマーク。受け取り、泣き出してしまう結子。
舞「(おろおろして)ママ、どうして泣くの」
結子「ゴメン、舞。笑顔だね、笑顔……」

   泣き笑いする結子。
(完)


●最優秀賞
「チケット」研修科・西夏史
●東京校賞
「もう一つの誕生日」作家集団・水村節香
応募総数 85本