「打たれ強くならなければ、
ライターにはなれませんね」
◆シナリオセンター 忘年会特別講演会

岡田惠和さんプロフィール

シナリオセンター出身ライター。
'90年「香港から来た女」でデビュー。
「君の手がささやいている」でATPグランプリ・橋田賞作品賞などを受賞。
'99年度文化庁芸術選奨放送部門
新人賞受賞。
2000年には芸術推選文部大臣
新人賞を受賞。「ビーチボーイズ」「ちゅらさん」「アンティーク 西洋洋菓子店」等を執筆

“南のドラマは当たらない”を
くつがえしたNHKの「ちゅらさん」。
僕はシナリオ・センターで勉強したのですが、20代後半の頃、ふと立ち読みした月刊「ドラマ」掲載の台本に、「これならちょろいかも」と思いました。TVドラマの台本にはむつかしいことが書かれていないからです。芥川賞を読んでそう思う人は少ないでしょう。しかし、それがシナリオライターになりたい人の陥る罠なのです。

 ドラマの定説に「南のドラマはあたらない」と云うのがあります。南はなんとなく厳しくないイメージがあり、「北の国から」を同じ内容で南でやってもきっとダメでしょうし、サスペンスにしても北の方が緊張感を感じさせます。僕は母が沖縄生まれと云うこともあり、「ちゅらさん」にある種の運命を感じました。

沖縄はドラマにしにくいと云われています。取り組みすぎてしまい、暗いものになりがちで、それは現実の沖縄もそうです。

そこで、沖縄に行かれた方が実際に感じられるような沖縄の雰囲気が伝えられたなら…、登場人物を愛していただいて、その向こうに沖縄の姿が見えれば…、その辺が僕の勝負と思いました。

初回は史上最低の視聴率だったのですが、スタッフが段々一緒に楽しんでくださって、壊れてゆく、溶けてゆくのが楽しく、後半はいい感じになり、最終回をファックスした時には、電話の向こうからスタッフの涙声と祝福の拍手が聞こえました。
ライターとは創り続けていくことが問われる仕事。
シナリオ・センターで学んでいた頃、決して僕は、「あいつは絶対…」と言われるタイプの生徒ではありませんでした。新井先生から皆勤賞の本はいただいたのですが、ゼミでは「テーマがない」「軽い」と言われ続けました。この2つは今も言われているんですが…。その意見が大変ショックだったのを覚えています。

ライターになりたい人は書きたいのに読んでもらうのがイヤな人が多いようですが、それを克服することが一番大事なのではないかと思います。ものすごい物を一本書いても意味がなく、ずっと作りつづけてゆくことが問われる仕事だからです。

人間性を変える必要はありませんが、それができるようにセンターで学んでいただければと思います。
若いライターの刺激とファイトをいただきたい。
仕事になりますと散々言われますので、シナリオライターは「言われること」に慣れているべきです。
特にテレビの世界は映画と異なり、打たれ強くならなければできません。

脚本は自分の書いた物が100%ではなくて共同作業の中の一つです。他のスタッフ、キャスト、みんなが愛せないとスタートできません。決して個人の物ではありません。

初めは僕はそう思えなかったのですが、今はそう思えるようになりました。意見や考え方が違うのが当たり前なのだと、今の内に頭の隅に置いておかれることが大切です。

今でも弁護士のいない裁判に出席するような気持ちですが、仕事をしてゆくうちに、自分の作品に対して客観的になってゆくものです。自分で批判して、「誰が書いたんだよ」などと思えるように、ここ数年なれました。

色んなタイプのライターがいらっしゃるでしょうが、僕はそういったスタイルで行きたいと思っています。
みなさんにもそうなっていただきたいです。

そして、若手ライターに出てきていただいて、刺激とファイトをいただきたいと思います。

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