第22回放課後倶楽部 平成17年4月23日(土曜日)
ドラマティックな人生を!
「ドラマ作りは人作り」
土居原作郎先生

  土居原作郎(どいはら さくろう)氏プロフィール

大阪芸術大学教授(舞台芸術学科・学科長)。関西学院大学社会学部講師。元NHKチーフプロデューサー。昭和10年、兵庫県芦屋市生まれ。昭和32年3月、関西学院大学卒業、同年4月にNHKに入局し、大阪放送局に配属される。大阪放送局芸能部担当部長、視聴者広報センター長、企画総務室広報部長などを歴任。平成4年3月退職。同年4月より大阪芸術大学教授・芸術計画学科・学科長。平成13年4月より大阪芸術大学舞台芸術学科・学科長。その間「鮎のうた」「心はいつもラムネ色」「はっさい先生」(いずれも連続テレビ小説)「なにわの源蔵事件簿」(水曜時代劇)「炎熱商人」(ドラマ・スペシャル)など数々のドラマを企画・演出・プロデュース。「芸術祭優秀賞」「ギャラクシー賞」「NHK会長賞」「NHK大阪放送局賞」などを受賞。ドラマの演出・制作を通して人間のぬくもりを多彩に描く。


メッセージ
人は物語を好みます。そして、個々のキャラクターに魅力を感じます。物語=ストーリーとキャラクターはお互いのイマジネーションをふくらませながら、切っても切れない関係です。ニワトリが先かタマゴが先かに相通じるものがあります。
シナリオの書き手を目指す皆さんに、永年、私が携わってきました、テレビドラマの演出、プロデュースの経験をお話しさせていただきます。仕事の上でお付き合い願った、作家の方々、俳優さん方のエピソードもたっぷり喋ります。必ずといっていい程、皆さん人知れず陰の苦労をなさっています。世阿弥が言うところの、“秘すれば花”といったところでしょうか。連続テレビ小説のヒロイン選びも楽しい思い出です。皆さんからの質問にも、出来うる限り、応えたいと考えております。それでは出逢いを楽しみにしております。


講義内容
 大阪芸術大学教授、関西学院大学社会学部講師、そして、元NHKチーフプロデューサーと、三つのお顔をお持ちの、土居原作郎先生の御講義。――「放課後倶楽部っていうんだから、放課後のようにざっくばらんに気さくに!」と、和やかなムードでスタートしました。

 ギリシャ悲劇、古典主義演劇、リアリズム・・・ちょっと敬遠気味の演劇の基礎知識。そんな難しそうな事柄も、先生の話術にかかればすんなりと入ってきました。演劇の歴史、西洋と東洋の違い、そして、シェイクスピア、イプセン、近松も、身近に感じられるようでした。 

「演劇は、時代を映す鏡である!・・・だから書くことだけではなく時代の勉強も必要!」 数々のハッとさせられるお言葉。そして、そんな真剣なお話の合間にポロッと出る冗談。会場からは何度も笑いがもれました。まさに、「緊張と緩和!」

 後半の質問コーナーでも、シナリオライターを目指す参加者の道標になるようなお答えが返ってきました。 「心に残るドラマは、志が高く共感を呼ぶもの」「ドラマは、人間の生き様を描くもの」「時代が移り変わっても、作り手として失ってはいけない心は、上質のサービス精神!」

 初心に戻り、演劇やドラマの基礎や本質、あらゆることを学んだ二時間。学生時代のような懐かしさと、体験したことのないような新しさを同時に吸収できたようです。
  

参加された方々のお声
・私が初めて、NHK朝の連続テレビ小説で観たドラマが、「心はいつもラムネ色」でした。当時私は高校生で、その頃はまだ、シナリオライターになりたいなどとは全く思っておりませんでしたが、ただただストーリーが面白く、ずっと観ていました。今日の講義で、「テーマを持って魅力ある人物を描くこと」が、見続けられるドラマを作ることができるとわかりました。

・演劇史の講義の部分は、改めてドラマというものが持つ人間の根源との深い関わりを認識させられました。

・何気なく志したシナリオライターの勉強ですが、先生がおっしゃられたように長い歴史のあるものなのだと気づきました。「高い志で書く」と言われましたが、「成る程、そうなのだ」と思いました。人間を描く。上質のサービス等々。これからも心に留めておきたいと思っております。

・私は現在シナリオを書きつつありますが、本来の芸術・演劇を根本から学び、シナリオの中に具現したいと考えます。ドラマ作りは人間作りのお話ですが、ドラマに限らず物作り(例えば人工衛星でも)は、根本は人間作りから考えるべきだと思います。これからも一層の努力をするつもりです。

・合間にポロッとでるギャグのような本音がおもしろかったです。講義の内容だけでなく、先生のキャラクターもシナリオに生かしたい!・・・そんなことを思いました。

・どういったところからお話されるのかと楽しみでした。前半の、様々な分野や歴史などは、先生の思考回路(お話の飛び具合?!)についていくのがまずは大変でしたが、非常に面白く、目からウロコもかなりありました。後半の、先生がこれまでに作られたドラマなどのお話は、その場に一緒にいるような感覚にひきこまれました。

・久しぶりに、学生時代の講義を受けている心地よさを感じた二時間でした。私は、“上質のサービス精神”で、今後もシナリオの勉強を続けてまいります。今の社会や子供、大人になりきれていない大人たちへ贈るメッセージを、一字一字・一セリフ一セリフ大切にして。50歳を過ぎて、このシナリオ・センターに入りましたが、当時の思いをまた、先生のお話で思い返しました。感謝いたします。

・シナリオライターを目指していますが、最終の夢は、NHKの朝ドラの脚本を書くことです。実際に携わっていらっしゃる先生のご講義は大変参考になりました。特に、『心はいつもラムネ色』の中の、「大阪人の愛し方は、隠れて善行を施す」というお考えからは、先生独自の人間を見られる優しさが伝わり、私もそういう作家になりたいと思いました。私も、「人間の心の動きが丁寧に描かれた」作品を究極の目標に、あきらめずにコツコツと描き続けていきたいと思いました。

・60年前の学生時代に戻り、久し振りの講義・基礎講義を受講した感じで感動いたしました。人間の本質、そして「ドラマは人間である」というお言葉。現代の社会現象の様々の出来事。これもまた、時代とともに移り変わっていく人間の業の推移でしょうか。3歳までの人間性形成の一つ一つ、常日頃から考えていることでした。次の代を受け継いでくださる若い人達、是非是非心の中に大事に、そして実行して下さい。人生は一回です。無限です。

・ドラマが古い昔から存在したことの考証、特に面白く聞かせていただきました。遊びの4大要素の話や、アリストテレスの説は、今すぐに役立てることは私の力量では叶いませんが、将来必ず役立つものだと直感しました。何度もかみしめる、価値のある教えだと思います。

・今のイケメンを揃えたトレンディドラマの軽さ・空しさに不安を感じることもありましたので、先生の「志が高くて共感できる」「人間がしっかり描かれている」「上質のサービス精神」が大切だとのお言葉は、これからのシナリオ作家修行の支えになってくれると思います。


・私は今、ドラマを書く修行をしています。毎回しぼりだすように書いていることは、いつも私が感じてきたことや、子供の頃の風景です。心に残った様々な風景を描写しています。先生の今日のお話の中にあった、記憶された感情です。私はそれがリアルさだと思っているし、人間をうつしとることだと思っています。しかし、今の私の中の記憶された感情はまだまだ少なく、これをもっともっと増やすことが大切だと思います。例えば、今日のように心躍るような先生の体験を聞くこと、色々な人に出会い話を聞くこと、などです。

・演劇には、先生のおっしゃられた様に、長い歴史がある事にいまさらながら気付きました。何気なくはじめた勉強ですが、「ただ楽しいから」というのではなく、先生のおっしゃった「上質のサービス」「人間を描く」「高い志を持って書く」という事を心に留めて勉強を続けていけたら・・・と思いました。