第17回放課後倶楽部 平成16年10月30日(土曜日)
夜討ち朝駆け
「事件記者は眠らない! サツ回り編」

三谷 佳弘 先生


   三谷 佳弘(みたに よしひろ)氏プロフィール

1956年生まれ。1979年、毎日新聞に入社。福井支局、奈良支局などを経て、85年〜88年、大阪本社社会部(主に大阪府警捜査1課担当)。88年〜91年、神戸支局(兵庫県警キャップ)。91年〜95年、大阪本社社会部(司法キャップ、府警キャップなど)。95年〜97年、奈良支局次長。97年〜98年、大阪本社特別報道部デスク。98年〜01年、大阪本社地方部デスク(事件担当、筆頭など)。1年〜03年、編集制作センターG1(旧整理部)部長代理。03年〜神戸支局長。

「切った張った」と、花形にみえる事件記者。ところがどっこい。うわべは華やかそうに見えても、やってみると実情は大違い。入社が一年下なら虫けら同然の扱い。鬼のデスクやキャップの叱咤激励に耐え、暑さ、寒さ、眠さ、空腹との格闘が日々続きます。俗に「夜討ち朝駆け」といわれるサツ回り(サツとは警察のこと。やくざな世界の隠語です)記者はいったいどんな生活をしているのか。家族との団らんは?あなたは、想像を絶する未知の世界を知りたいですか? かたぎの素人さんのために、サツ回りの24時間を徹底解剖してお教えします。


講義内容
 「警官宅への『夜討ち』は週7回。『朝駆けは週6回!』(日曜の朝だけは遠慮)」

 毎日新聞社神戸支局長・三谷佳弘先生のお話は、前回同様かなり興味深い内容でした。事件記者の多忙さに、参加者は終始驚きの連続!

 事件が動いているときは、朝の4時頃帰宅。その1時間後には『朝駆け』のタクシーの中。睡眠は移動中のタクシー内と、14時〜16時の昼寝のみ。事件記者は「眠らない!」というよりも「眠れない!!」

 新聞のシステムや、会社組織図の丁寧な説明。20年前の「グリコ・森永事件」、翌年の「豊田商事事件」〜現代の「オレオレ詐欺」等、世間を騒がせた事件のマル秘エピソード。時代とともに移り変わる取材形式と道具……etc。ここでしか聞けない面白い話が盛沢山!

 が、三谷先生ご自身は、「取材していた頃は、面白い事件は全くなく、悲しい思い出ばかり」。そして、最も腹立たしい事件は、やはり「朝日新聞阪神支局襲撃事件」。さらに、「活字離れの現代、いくら書いてもテレビにはかなわない」という厳しい現実も。
 そんな中での喜びは、「自分が書いた記事に反応があったとき」。そして、「やっている以上は読んでもらえる記事を書く!」と。そのお言葉からは、記者という職業のプライドを強く感じました。
 充実した二時間の講義。参加者からは早くも「第三弾」を望む声が聞こえてきました。


参加された方々のお声

・新聞記者の方が記事を書くために涙ぐましい努力をされていること、また、その記事に対する想いというものがわかりよかったと思います。

・13版、14版の違いや、朝夕刊セット版がある事など、まわりで知らない事を教えて頂き、参考になりました。

・新聞の事件記者の話を聞きに来たのですが、取材の仕事とか記事になるまでとか興味深い話を聞かせていただきました。その中で書くことで得られるものの素晴らしさみたいなものについて考えさせられました。

・信念をもって仕事ができるって素敵だなぁと思いました。

・いつもながら何かを取材したり、人の前で話をするのは緊張するなぁと思いました。でも先生はそれをお仕事とされている人で、だからこそ僕からは何か大きく見えました。やさしそうな外見で質問させていただきやすかったです。勉強になりました。

・前回のお話もお伺い致しました。今回は事件記者としてのお仕事もそうですが、もっと根本の報道ということの機能の変り行く方向を見ていらっしゃる様に思えました。が、それとともに短い記事が人の心に伝わり動かしたりということ=自分のメッセージが他人に伝わったということに感動なさっていらっしゃるのが、よ〜く分かりました。

・誠実な話しぶりと穏やかな人柄で私が持っている事件記者のちょっと恐いようなイメージとは違っていました。お話もおもしろく、よく整理された話し方でありながら、温かみがあり、この講演を聞いてよかったと思いました。生活に密着した新聞作りを目指されておられるようで納得しました。私は今毎日新聞をとっていますが(大阪市内)、好感度がよりアップしました。

・人と人とのつながりの大切さ、めぐりあいの面白さも感じました。ありがとうございました。

・自分の仕事に対する確信と思想、どこを切っても出てくる回答、身体全体が「新聞記者」である人だなぁと感じました。

・動機(仕事についた)は、自分と同様に適当な所からやってくるものなのだなぁと感じました。
・過酷な労働環境、成果に到るまでのやりがい等、大変貴重なお話、作品づくりへの参考となりました。

・質問形式で、こちらの知りたいことにピンポイントでお話いただいて、ききやすく面白かったです。


・こういう関係のドラマを見るのがより楽しくなります。

・新聞社の組織、出稿のシステム等参考になりました。

・エピソードを聞けたのがよかったです。記者達の森を読もうと思います。もし、パート3があるとしたら、「保秘」が強められるきっかけになったグリコ森永事件、のような、内部の変化の流れを聞きたいです。