第15回放課後倶楽部 平成16年8月28日(土曜日)

「戦争映画とわたくし」

黒木和雄 監督


  黒木和雄(くろき かずお)氏プロフィール

映画「父と暮らせば」より

▼作家歴
1954年 岩波映画製作所演出部に助監督として入社
1957年 監督昇進
       記録映画「海壁」「ルポルタージュ・炎」「わが愛北海道」などを演出
1962年 フリーとなる
1964年 「あるマラソンランナーの記録」(長編記録映画)
1966年 「とべない沈黙」
1969年 「キューバの恋人」(黒木プロ・キューバ国立映画芸術協会合作)
1970年 「日本の悪霊」<キネマ旬報主演男優賞(佐藤慶)>
1974年 「竜馬暗殺」<シカゴ映画祭審査員特別賞>
1975年 「祭りの準備」<芸術選奨、キネマ旬報助演男優賞(原田芳雄)>
1978年 「原子力戦争−LOST LOVE−」
1980年 「夕暮れまで」<ブルーリボン助演女優賞(加賀まりこ)>
1983年 「泪橋」
1988年 「TOMORROW/明日」<キネマ旬報日本映画監督賞、主演女優賞(桃井
       かおり)、イタリア・サレルノ映画祭最優秀監督賞>ほか
1990年 「浪人街」<主演女優賞(樋口可南子)、助演男優賞(石橋蓮司)>
2000年 「スリ」<日本映画批評家大賞監督賞、キネマ旬報主演男優賞(原田芳雄)、
       同助演男優賞(香川照之)、新人賞(真野きりな、柏原収史)>
2003年 「美しい島キリシマ」<キネマ旬報ベストテン第1位作品賞、監督賞、新人男
       優賞(柄本佑)、日本映画ペンクラブ第1位>ほか
2004年 「父と暮せば」7月31日岩波ホール公開予定

映画「父と暮らせば」より

メモ
1967年 フランスのプロデューサー、プロンベルジュ氏よりフランスでの演出を依頼される
1968年 パリシネマテーク館長、アンリ・ラングロア氏のオマージュによる「とべない沈黙」
      上映会に招待される
1985年 パリシネマテークフランセーズにおいて、黒木和雄作品特集上映される
       文化庁在外芸術家特別派遣により、フランス、イタリア、オーストリアの映画事情
       を3ヵ月にわたり視察
1986年 テレビドキュメンタリー「かよこ桜の咲く日」が第1回芸術文化賞、ギャラクシー賞
       受賞
1994年 NHK「わが映画、わが故郷−黒木和雄・中国の旅−」を構成、演出する
1997年 東京、アテネ・フランセ文化センターにて、2週間にわたり25作品上映
1998年 大阪、シネヌーヴォ梅田にて、23作品上映 
       NHK「黒木和雄 現代中国アートの旅」(映画同人社製作)に出演する


講義内容
「人生は、本人の思うようになる!」

 映画監督、黒木和雄先生のお言葉は、参加者にとって大きな励みとなりました。

 前半は、少年時代の戦争体験と、映画界に入られてから、現在に至るまでのお話。
 15歳の時、爆撃によって目の前の友人の死の瞬間を目撃したこと。そして、置きざりにしたことを今でも後ろめたく思っていること。戦争の残酷さを、穏やかで淡々とした口調で語られていたことが印象的でした。

 映画監督になられてからも波乱万丈。ひょんなことからキューバとの合作映画をつくることになったり、借金でヤクザに追いかけまわされたり……。ドラマのような人生に、参加者も興味津津!

 そして、後半の質問コーナーは、まさに宝の山! 得るものがかなりありました。

 「撮りたい! と思うシナリオは、技巧的にヘタでも、発想力があり、おもしろいもの。おもしろく描くためには、その人だけの描きかたをすること」「最初の作品は、目立つものを!」「自分を売り込むため、知りあいをつくっておく」「映画を描ける人は、今日本で10人くらい。だからチャンス! 年齢は関係無い!」等。シナリオライターを目指す人の道しるべになるようなお言葉が盛り沢山!

 その他、加賀まり子さんや「父と暮らせば」の宮沢りえさんの、感動&おもしろ裏話などもあり、バラエティに富んだ内容でした。

 笑ったり、涙したり。素敵な二時間でした。

参加された方々のお声
・例え、自分が戦争経験がなくても、自身にとっての戦争≠しっかり捕らえ直さなければいけないと思った。黒木監督の、監督、シナリオライターは何でも知っておかなければいけない≠ニいう言葉は勉強になりました。

・是非、父と暮らせば′ゥに行きたいと思います。3人芝居ということであまりそういった物をみたことがなかったので、興味深く感じました。

・「伝えたいこと」がまずありきだと思いました。それを表わす方法は、様々に世の中にあって、その中にシナリオがあって、私はまずそれを長くかけて考えていきたいと思いました。伝えたいことがあります。

・「赤い色をどうみせるか」「人生は本人の気持ち通りになる」など方法論と勇気をもらいました。

・非常に貴重なお話をうかがい、有意義な時間を過ごせました。人生は思い通りになりますよ≠ニサラリとおっしゃった監督が印象的でした。

・素晴らしい映画をとられる監督さんでも、若い頃にはいろいろなご苦労をされておられたのだと驚きました。「自分に絶望せず」「自分の思った通りになる」とおっしゃった監督のお言葉を忘れずに精進したいと思います。

・映画監督というオーラはこんな風なのだと初めて生で見せていただいたのが良かったです!亡くなった方々の思い、もの言えぬ人や生きものの思いを代わって表現出来る、時間・空間を瞬時に行き往出来る。そういう素晴らしさを感じ、映画というとらえ方を改めて考えていこうと思います。

・めったにない機会だったので、楽しい話、為になる話が聞けて勉強になりました。3部作きちんと拝見させて頂きたいと思います。ありがとうございました。

・とても面白かったです。映画監督になられるまでの経緯は、とてもドラマチックに思え共感できました。何故、戦争映画をとられたのかも分かったような気がします。父と暮らせば≠熾Kず見に行こうと思います。何年か先に「冬のソナタ」のような映画が封切られることを楽しみにしています。たくさんの、心のこもったお言葉をありがとうございました。

・同じ世代に生まれた者として、お話に非常に共感を覚えました。戦中戦後そして現在の繁栄といささか感無量です。

・15〜16年前「TOMORROW/明日」を観たとき、こんなに静かで激しい戦争映画があるものかと感動しました。戦争映画は軍人や戦場を描くものではないという監督のセリフに映画のシーンが鮮やかによみがえりました。


・つたない我々の質問にていねいに答えて頂き、感謝しています。

・黒木監督の監督になられる前のお話やこの世界はほとんどが人との出会い、どういう人と出会うのかという言葉がいちばん心に残っています。

・映像は想像の産物であること=B心に留めて書きます。