2013年12月 楽しくシナリオ道場
課題「告白」
8枚シナリオコンクール 光ってる★シナリオ賞 最優秀賞

ラブレターfrom金田文具店 作:細原梓(75期生)

金田哲平(33)
金田藤子(65)
里中美月(26)

○金田家・居間(夕)
   金田藤子(65)が洗濯物を畳んでいる。ポケットから紙くずが出てくる。
藤子「何かしら。哲平の字だわ」
   つなぎ合わせ、何かに気付く。

○金田家・玄関(昼)
   金田哲平(33)が出かける準備をしている哲平の背中越しに
藤子「彼女、いるなら紹介してよ。あんたもそろそろいい歳なんだから。お話好きで一緒にこの店手伝ってくれる娘だといいわぁ」
哲平「あぁ…まぁそのうち…。いってきます」
   振り返らず出ていく。首を傾げる藤子。

○レストラン
   テーブル席に哲平と里中美月(27)が食事をしている。楽しげにメモを書いて読み合っている。
   二人の様子を奥のカウンターからじっと隠れながら藤子が見ている。
藤子「はーんあの子ね。哲平にしては良い娘捕まえたじゃない。でも何してるのかしら」
   哲平が席を立つ。
   待っている間美月はメモを見て嬉しそうに微笑んでいる。
   食器の割れる音がする。
   美月の後ろの席でグラスが割れ赤ワインが床に広がっている。
   店員が駆け付け周りが騒然としているが美月はメモを見たまま何も気付いていない。店員が話しかけても応じない
藤子「そういうことか…。だから紙に…」
   セロテープで繋ぎ合わせた紙くずを広げる。結婚しようと書いてある。

○金田家・居間(夜)
哲平「ただいま」
藤子「おかえり。プロポーズ出来た?」
哲平「あ、あのさ。実はそのことで話したいことが」

○金田家・居間
   二人、改まった様子で正座している。
哲平「会話出来ないんだ、彼女。実は耳が」
藤子「聞こえなくてもお話してじゃない」
哲平「え…?」
藤子「こうやってメモ書いてお話してたでしょ」
   藤子は机の上にお菓子の入っていた箱を出す。蓋を開けると沢山の手紙。
藤子「お父さんはね、無口で寡黙な人だったけどこうやって大事なことは手紙にしてくれたのよ」
哲平「こんなに…」
藤子「プロポーズも手紙でね。金田文具店で一番可愛い便せん使って、こーんな大きな花束と一緒に」
哲平「あの親父が?」
藤子「すごく嬉しかったし幸せだった。今でもたまに読み返してドキドキしたりして」
   二人、仏壇に視線を送る。
藤子「あの娘のことが大事なんでしょ?」
哲平「(力強く)うん」
藤子「わかった。だったらちゃんとウチにお嫁に来てくださいって書きなさい。あんな汚い紙切れなんかじゃなくて」
   ピンクの花柄のカードを出す。
   藤子、にっと笑い
藤子「当店イチオシです」
哲平「ありがとう。え、でもなんで?なんで知ってるの?」
   困惑する哲平を見て大笑いする藤子。

○駅前(昼)
   美月が歩いてくる。哲平の姿を見つけると笑顔で手を振る。
   哲平も笑顔で片手を挙げて応える。
   背中にピンクの花柄のカードが入った大きな花束を隠している。